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SUNNY 強い気持ち・強い愛のTaiRaのレビュー・感想・評価

SUNNY 強い気持ち・強い愛(2018年製作の映画)
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『サニー』を日本でリメイクします、舞台は90年代です。と、ここまでは全然良いんだけど、果たして監督は大根仁で良かったのか?

90年代に女子高生だった世代の女性には普通に響くかもしれない。オリジナル版がちゃんと面白いから、基本プロットを踏襲した今作もそこそこの映画にはなってる。だけど何だかふんわりと出来が悪い。90年代懐かしアイテムで画面を埋め尽くしても、90年代ヒットソングをたくさんかけても、それに意味を感じない。オリジナル版が80年代韓国の時代性を文化的、政治的な面から描いていたのと違う気がする。90年代日本って何だったのか、コギャルって何だったのか、そういうのに踏み込まないとリメイクとしては失格でしょ。あと大人になった主人公をちゃんと描く気もない。あの主人公の夫婦関係や娘との関係って途中から映画に出て来ない。なら何で意味ありげに出してたのか。あと、ああいう貧乏人が考えた金持ち家庭みたいなの観ると勘弁してよって思う。女同士の友情を描く為に旦那を嫌な人間として描くって演出がチープ過ぎないか。他のキャラクターたちも絵に描いた様な不幸さ。これじゃコギャルやって調子乗ってた子たちが大人になって苦労してるってだけの映画じゃん。探偵のオッサンが主人公に当時の事を「どんな気分でした?」と聞いても主人公はちゃんと答えない。これじゃ単に「昔は良かった」って話にしかならない。別に青春時代が美しく終わらなかったとしても幸せな人生は歩めるし、その上で大人になってから青春に落とし前をつける事だって出来る。90年代って時代にフォーカスしてるのに批評性が欠けてる。じゃあ娯楽性はあるかと言ったら演出の腕がないので微妙。ミュージカル演出は相変わらず下手。コギャルたちが集団で踊り出すのに全然楽しくならないんだよ。『ラ・ラ・ランド』風なのを『LA・LA・LA LOVE SONG』でやるって洒落なのかな。なんか中途半端にカメラ位置が高過ぎるし。高校生の集団ダンスならポカリのCMの方が1000倍良いよ。ちなみに山本舞香と池田エライザはマジもんのギャルっぽさが滲み出てて良かった。

そもそもこの企画は安室奈美恵をツモれるか否かが勝負みたいなものだったよね。それが出来なかったから開始早々に「安室奈美恵が存在する世界」って提示しちゃう。もし最後に安室ちゃん出て来たら映画としての完成度とか関係なく伝説の映画にはなったよ。
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