もやし

ローマンという名の男 信念の行方のもやしのレビュー・感想・評価

5.0
「ナイトクローラー」の監督作品。

一人の愚直な男の人生。なんか何とも切なかった…


人権派弁護士の主人公。
不正は絶対許さない。正義感の塊。
たぶんアスペルガー症候群かな?と思う。
冴えない風体とコミュニケーションの下手さと冴え渡る頭脳。
一つの事務所で37年間、所長のパートナーとして、裏方で駆け抜けてきたが、所長が倒れて植物状態に。事務所は畳むことに。

自信満々で就職活動に挑むが、見事に玉砕。仕方なく理念の全く違う所長の関連事務所に入れてもらうも、全く上手くいかない。

そんな日々を過ごしている中、ふと思う。

正しさとは何だ?正義とは何だ?
そんなものに何の価値があるんだ?
俺の37年間は何だったんだ?俺の思いは何だったんだ?
世の中なんて変わらないじゃないか。そんなことに時間を割くことに何の意味があるんだ?

一転してしまった人生観から、全く違う生き方を選択してしまう。

そうすると全てが後ろめたくなる。
今まで仲の良かった人達が自分に話す正義の話。思いの話。全てが空虚に響く。こんなことを俺は主張してたのか?
こんな人達と同じ思想を自分は持っていたのか?

わからない。わからない。
そうして映画は徐々に臨界点を迎えていく。



不器用な男の話でもあり、孤独な男の話でもあり、社会というものへの認知、生き方、人生観の話でもある。

そんな男が悩み抜いた末に行き着くところとは。
思ったより胸を打たれるタイプの作品でした。
もやし

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