Sanald

オンリー・ザ・ブレイブのSanaldのレビュー・感想・評価

5.0
「炎は怖くない。恐れるのは、愛する人の涙だけ」

このコピーにものすごく胸を打たれる。

周りの映画好きたちがこぞって良い!と囃し立てるものだから、つい気になってフラッと観に行ったら…想像以上の良作だった。
それには今のわたしの立場もあるのかもしれない。

美しい自然が「燃焼材」となってしまう。その危機を食い止めるべく命を懸けて闘う男たち。
でも、彼らには愛する家族がいる。
裏を返せば、家族がいるから、炎に立ち向かっていけるのである。

軸として描かれるのは、プレスコット市の消防隊員をまとめるマーシュとその妻アマンダの葛藤と、マクドナウの葛藤。
前者は家族のあり方。
後者は既にある家族との向き合い方。
どちらの気持ちも痛いほど理解できるのだが、個人的にはアマンダの立ち位置に1番近くてつい感情移入してしまったと思う。

実際、わたしの恋人は公安職を目指している身なので、他の職業に比べれば命の危険に晒されやすい。
そうとわかっていながら、笑顔で「いってらっしゃい」と送ることができるのだろうか?
いつになるかわからない帰りを、ソワソワせずに待ち続けることができるのだろうか?
もし、殉職してしまったら、その時はどうなるのか?
…そんなことを考えていたら、どんどん胸が苦しくなった。

それでも、彼らの行った全ては無ではない。
火とともに散った命は、素晴らしい勇気と誇りを刻みつけていった。

いつか私も、彼の仕事に誇りを持ち、心の底から応援できるようになりたいものだ。

良さはストーリーだけではない。
炎が燃え広がる様子は恐怖でしかないのだが、なぜか見入ってしまう美しさがある。
広大な自然を焼き尽くす炎。恐ろしさと美しさは紙一重と、そんな気がした。

そして俳優陣の名演技。
「セッション」から気になっていたマイルズ・テラーは今回も難しくも魅力的な役を素晴らしい出来で演じきっていた。
それぞれの人物に魅力があり、キャラクターが確立していて、一人一人顔を思い出すことができるほどだ。

良作に出会った興奮で、今夜は眠れそうにない。
観に行く人は、ハンカチを忘れずに。
そして、劇場を出る頃には、命を懸けてまで自分たちを守る職についている人々と、自分の家族により一層の感謝が生まれるだろう。
Sanald

Sanald