突如身体から桜の枝葉が出てきて、内側から桜に食い殺される謎の病が流行している世界。人を殺してまで、植物が育たない北極に逃げようとする男。この時期にこのテーマは、重い。「桜は自分では増えることはない、人間があちこちに埋めたんだ」というセリフにゾッとした。桜を恐れて閉じこもる人々がいたり、物資をめぐって争いが起こったり。花見という概念がなくなったり、マスク無しでは出かけられなくなったり。感染によって変化した日常を、その次の世代の生活によって描かれているところには、タイミング的にポストコロナを想起せざるを得ない。恐るべき存在であるはずの桜を美しく撮れているところが映画のキモになっていると思う。