海老

ホース・ソルジャーの海老のレビュー・感想・評価

ホース・ソルジャー(2018年製作の映画)
2.6
マイティ・ソーがライフルを携えて大暴れする映画!なんて、気楽に構えて観られれば良かったのですけれども…
悲しいけど、これ戦争なのよね。

12人 vs 5万人!
派手な謳い文句ではありましたが、実際には12人が5万人相手に正面突破をするなんて話では当然なくて、GPS誘導・レーザー測定、指定座標への爆撃投下というミッションを繰り返す話。たったの12人で現地の反タリバン勢力と合流し、敵地に潜入する命懸けの作戦でありながら、その移動手段は馬というギャップ。
これらの点においては娯楽として楽しめるものではありましたが、正直わだかまりを感じてしまうのは、これが9.11の報復戦争である点。

自国を守るために戦う姿勢は賛成。
タリバンの行為は許されないという点も同意。
それでも、実在した人間たちを壇上に上げて勧善懲悪を断定されると、それは本当に大義なのかと眉間に皺が寄る。

12人の兵士たちは祖国や家族を守るために戦地へ赴いたのでしょう。敵性勢力とはいえ、人を殺す事への躊躇いを垣間見せる部分が、唯一人間らしさを感じた点。しかしそれも束の間だけ。
「どっちも自分が正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなもんだよ。」とはドラえもんの名言ですが、まさに米国側の正しさを疑うことなく主張される。

タリバンの行為が許せないとは言え、さながらゲームの雑魚キャラを倒すが如く次々に命を奪う描写に、手放しで喜ぶことはできません。戦争の残酷さ、愚かさより、英雄譚に寄せる事に違和感が消えない。
加えてこれだけの死闘で米兵は死者ゼロっていうのも、本当に史実の再現なんだろうかと疑ってしまう。実際は反タリバン勢力が闘っていて、映画では米兵がタリバンをやっつける絵が撮りたかったんだとしたら…なんて想像すると流石に恐怖を感じる。

9.11への経緯は全て端折った上で、これは偉業である、のテロップで締められる。この戦争に巻き込まれた現地の方に視線が向くこともなく、祖国へ戻ってハッピーエンド。

うーん…、モヤつく。

アメリカ視点ゆえにアメリカファーストなのも無理ないことかなとは思うものの、どうも喉につっかえを感じたまま飲み込めきれずに終幕。
アメリカすげえ!アメリカはヒーロー!とは、なりませんし、戦争への警鐘を鳴らす作品にも見えませんでした。
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