偶然にも意図せず借りたDVDがPTA(=ポール・トーマス・アンダーソン監督)の作品が2本もあり、そしてそれを立て続けに見たという奇遇。
鑑賞し終わってから、同じ監督の作品だったとやっと気付く。同じラブストーリーでも、良い比較材料となった。
感想が難しい。そんな作品。
先程鑑賞したばかりのパンチドランクラブとはだいぶ趣向を変えてきた、突き詰めた末の究極の愛。とは言っても傍から見ると理解に苦しむ愛の形。常人には到底到達しえないラインを超えてしまったそれは、歪そのもの。
個人的にはパンチドランクラブの微笑ましい愛の形のほうが好みだなあ。ファントムスレッドの愛を例えるなら、重厚感溢れる愛。
〝狂気〟
この2文字がレイノルズとアルマを的確に表す。
「倒れる前に、キスをして」
レイノルズのこの台詞の破壊力と言ったらもう。字面だけ見ると、何の変哲もない愛の言葉だが、アルマの行動を踏まえた上で、このセリフを聞けばきっとロマンチックなセリフには聞こえないはず。
死を意識させることで、生を実感させる。そうして物語の最初で築かれていた立ち位置が逆になっていく。
オートクチュールのドレスがどれも溜息が漏れるほどの美しさ。画面越しにでも伝わる肌触りの良いであろう生地質に、高級感溢れる素材の数々。綿密なディティールで描かれた、どれも突飛なデザインで一味違うドレス。煌びやかなドレスばかりで、女性であれば目を輝かせるはず。
クラシックな映像美に加わる、禍々しい感情の成れの果て。全てを愛と呼ぶには、あまりにも汚らしく見えてしまった。