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日日是好日のmaiのレビュー・感想・評価

日日是好日(2018年製作の映画)
3.4
樹木希林さん演じる武田先生とのお茶のお稽古を通して、黒木華演じるノリコが大人の女性になっていくお話しでした。

ストーリーや演技云々の前に、音や風景が本当に綺麗で…わたしは今までこんなにも綺麗なものを見過ごしてきたのかと感じました。この美しさが誰に言われるでもなく、すっと自分の中に染み入ってくるにはあと何年いるのだろうか…と言う感じです。

ストーリーには若干のありきたり感もあって、そこの点はわたし的にはうーんという感想を持ちました。ストーリーを考えると、映画サイトやここでの評価は高すぎる気がしますし、実際「遺作」だからこんなにも評価が上がってしまってるんじゃないかなと感じました。笑いも悔しさも迷いも…あれやこれや詰まってますが、どれも絶妙に浅くって、その浅さで「人生とは?」といういきなり深いところまで行っちゃうので、それを言いたいがためだけにあれこれ試練を与えて〜のパターンが見え見えで、もう少しストーリーを練ることは出来なかったのかなと思いました。ありきたりストーリーに、人生の教訓?的なものを付随するというありきたり感が勿体ない気がします。お茶を絡めてくるっていうのは凄くいいし、実際それがうまくいってる分なおのこと。
ただ、この映画の主題はあくまでもお茶を通して大事な考え方や感じ方を学ぶことにあると思ったので、そこを教えてくれたことに関してのスコアです。

習うより慣れる…という言葉は、様々な場面でよく使われるものだと思うのですが、この映画を観た後にその言葉を反芻するとまた違った深みが増しました。
自分の現在の感情に対して、自然の音や風景が馴染んだり。最初は手順やルールが多くて分からないことだらけだったお茶の作法も、いつのまにか体に染み付いていたり。今まではちゃんと見ることのなかった掛軸に想いを馳せたり。
その感覚を自然と身につけていく主人公は本当にどんどんと素敵な女性へと変化していきます。大学生の頃の冴えない感じが抜け、余裕と落ち着きを身につけていく姿に憧れを持ちました。

主軸はノリコなのですが、そこに寄り添ってくれるのが家族や武田先生でした。
どんな時も武田先生がそっと優しく・温かく教えてくれる。しかも、ノリコにとっては大きな助言になった言葉たちも、武田先生が何の気なしにポンっと口をついたように言った言葉なのです。「人生の教訓を教える」みたいな堅苦しい雰囲気じゃないからこそ、観ている側としても肩の力を抜いて楽しめ、時にハッと気づかされます。

素敵な映画でした。
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