ぴのした

日日是好日のぴのしたのレビュー・感想・評価

日日是好日(2018年製作の映画)
4.1
復活したみなみ会館にて。ものすごくよかった…!さすがみなみ会館が復活初日に選ぶだけある。

黒木華と多部未華子が樹木希林に茶道を習うだけの話といえばそうなんだけど、なんでこんなに良いのか。。

3人の演技の質が高すぎるんだよな。最初の垢抜けない黒木華と多部未華子の対比がまずすごい。

黒木華の地味な大学生感のある服装や姿勢の悪さ、樹木希林に教えてもらっているのにちょいちょい多部未華子の手元を見てしまう感じとか。

対して多部未華子は最初から姿勢正しくちゃきちゃきしてて垢抜けてる。映画では全く語られないが、そんな垢抜けた多部未華子でも、好きなものがちゃんとあってまっすぐな黒木華を羨ましく思っているのが分かる。

茶道の所作を2人と一緒に観客が見ることで、「茶道って変なのー」から「日日是好日、こういうことだったんだ」を体感できる。茶道の所作をずっと見せられるのは退屈そうな気もするが、この3人の微笑ましさもあって全然苦にならなかった。

茶道の素晴らしさとは、移り変わる四季の中でその日その日を知ること、楽しむこと。映画で表すには難しそうなテーマだけど、ストンと落ちた。

音の力もあったと思う。雨の音、蝉の声、水の音、柄杓を音。茶道の音と自然の音にフォーカスした作りで、お茶を立てている静かな場面なのに緊張感があった。最初と最後に挟まる音楽も環境音をベースにしてる感じがして非常に良かった。

何より感動したのは樹木希林の演技というか樹木希林の存在というか。

この映画が公開されたのは樹木希林の死から1ヶ月後。何年も前から全身にガンがあることを公言していた。死期が近いことは本人を含め誰もがわかっていた。

映画の中では、64歳から24年の時が経ってもピンピンしている。ラストシーン、「12年後私たちはどうなっているかな」という問いに「あらその時わたし100歳?」とおどけて見せる。現実では亡くなっても、スクリーンの中では永遠に生き続けると訴えかけているようで感動した。

8.1/2がダメだった僕がフェリーニの道を見て感動できるかは分からないが、少なくともこの映画を見て良さがわかる人生で良かったと思う。ありがとうみなみ会館。