nocturne

劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel II. lost butterflyのnocturneのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

追記に追記重ねてしまいなかなか書き上がらないので出しちゃいます。

[脚本]18/20
アニオリの藤ねえと桜(とイリヤ)のシーン、入れた人は天才でしょう。藤ねえの桜の導きかたはもう泣くしかないじゃないですか。凄く優しくて、なのにその優しさに桜はどうしたって応えられない。士郎の側にいたいのにいられない。悪いところを治したくても自力じゃどうにもならない。それが心底切ないです。
また、慎二の焦燥・嫉妬の描きかた。図書館での戦闘シーンのアングルは、とりわけ同じ室内なのに切り離された空間にいるようでした。
総じての感想として、それぞれがそれぞれの地雷を悪意無くとも踏み抜いてしまうのが辛いですが、それって"誰かのために尽くす"ってことがどれだけ難しいことかの現れでもあるわけで。考えられたストーリーを

[映像]14/15
満点でない理由は中盤のセイバーオルタvsバーサーカー戦。"いやいやどこが?"と思われるかもしれませんが、第1章の"何をやってるか分かる物凄いシーン"から、今回は"もはや何が起こってるのか分からないけど凄い"になってたんですよね。間違いなく凄い。けど"分からないほどの凄さ"って何か違う。その違和感を拭い去れなかったのが理由です。それって見るがわの問題を押し付けてるだけにすぎないかもしれませんが…。
しかしそれも些細な事であり、文句のつけようがないです。相変わらずのufotableクオリティ。2章はエロやグロといったシーンもあり振り幅が大きいと思うのですが、その全てが完璧だったと言うべきでしょう。
音楽。梶浦さんはやって良いこととやっちゃいけないことを考えなきゃいけないと思います(褒め言葉)。I beg youの破壊力が凄すぎる。
引き込まれたのは結界の発動シーン。UBWと比べれても段違いの絶望感。

[演技]9/10
今回はそれぞれのキャラクターに見せ場があったからこそ、声優の方々の演技も際立ったなあという印象を受けました。
やっぱり一番印象に残ったのはrainのシーンなんですが、
ほかにも士郎が桜を刺せないシーンから"裏切るとも"のなんとも腹の据わった感じや、藤ねえの"どうして?"とか、一つ一つのシーンが繊細に考えられてる。とてつもない映像に負けてない一人一人の声の演技も注目ポイントだと思います。

[好み]5/5
桜の内面が暴かれてきた第2章は、寧ろ第1章より好みだったりします。彼女自身が嫌う性格の醜さ・人の汚さが、だからこそどうしようもなく愛おしい。どうしてもそんな気持ちにさせられます。

[コメント]
主題歌"I beg you"はヤバい。梶浦さん作詞の歌詞の中でもここまで生々しく、直接的に響いてくる曲はなかなかないですよ。この曲に誘われてfate沼に足を踏み入れたこの私が言うのだから間違いない(お前は誰だ)

桜の毒々しい感情が抑えられてた、という主張。ここは難しいものがあります。
現に桜は3度にわたって凛を狙って攻撃している(1章の公園・2章の校内と、アインツベルンの城。全て庇われてますが)一方、竜洞寺で一人きりの士郎を狙わなかったり、凛を庇い傷を負った士郎を見て自罰的になった桜が一番激しく攻撃されているなど、桜の無意識が表現されていると考えればしっかり描かれてると思うんですよね。

士郎と凛はそれぞれ真っ直ぐ、自分の信念を通しきってるんですよね。凛は前2ルートと同じくぶれてない(士郎のスタンスが違うので、凛の見えかたが違うだけ)。いざとなったら桜を切り捨てるつもりだけど…。
城への道中で出会ったときに心なしか嬉しそうな表情をしてたのはひっかかりました。スパッとしてグズグズ引っ張らないのが凛の魅力とはいえ、あの時点での士郎は桜を匿う敵対的な立場にあるわけで、"そこでその表情なの?"とは思いました。少し考えれば納得は行きましたけど。
凛はどのルートでも凛のままなんですよね。非情に徹しきれないお人好しな小悪魔。だから士郎の棒高跳びのトラウマに少し笑みを浮かべ、桜から姉さんと呼ばれて赤面するし、けど桜を切り捨てる覚悟もする(それでも士郎に止められたときの表情は果てしなく悲しげでやるせない)。士郎が"決めたことをとことん貫く"という点でUBWとHFで向かう道のりは全く違うのに、凛は誰にも流されない。それは少し寂しいけど、本人も気に入ってる生きざまなんですよねきっと。
けど、真っ直ぐ歩きたいのに歩けない、歩く気力を持てない桜は、それぞれの思いに触れる度に少しずつ昏い思いを孕んでしまう。二人の強い思いは、桜の心に波風を立てるにも十分すぎるんですね。
それでも士郎の迷いながらの決断を見て、ほんの少し生まれたちっぽけな勇気。ところがそれは臓硯の手のひらの上。まんまと誘導された挙げ句の慎二殺害。全くあんまりです。

そういえばLost Butterflyって結局どういう意味で、何を指しているんでしょう。闇落ちした桜の事と考えるのが自然なんですが、主題歌では桜=小鳥なんですよね。同一の物を指すのに別々のモチーフを使ってるだけかもしれませんが…。
そのあたりも含めて謎多し。3章に向けて期待度は高し。
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