あーな

恋は雨上がりのようにのあーなのレビュー・感想・評価

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
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原作未読。アニメ未視聴。全く予備知識なしでの観賞。
いつもだったらスルー系の映画だけど、予告の大泉洋があまりにもカッコよかったのが忘れられなくて仕事終わりに駆け込んでみた。

……結論、私は怒ってますよ!!(唐突)

なんかさ……こう……これでよいのか!?みたいな気持ちが、もくもくと。

以下、長文駄文。私の思いの丈です。






大泉洋扮する店長が、大人の男としてだらしないし、情けないと感じたのは私だけなのだろうか。

高校生のあきらから告白され、最初は冗談かなと思いつつも適当にあしらおう(逃げよう)と思っていたら、車中でものすごい圧のマジ告白(三回目)。この子ちょっとマジで言っているかも……と感じつつも、その返事が「俺はおじさんだから」「周りがどう思うか」「援助交際と思われる」……まぁわかる。いや、わかるんだよ。
でもさ、この人ずっとこの調子なんですよ。最初から最後まで、世間体を気にしてばかりの発言や、自分の自尊心の低さを全面に出しての返事しかしない。全然あきらの思いに対して真剣に返してないと思うんですよね。……私だけか!? 


あきらは、あの時。
自分の人生だと思っていた陸上が、突然崩れ落ちるようになくなってしまって。走れないという事実はもちろんだけど、走れなくなった自分に対する周囲の空気も、辛かったんじゃないかと想像する。
腫れ物に触るような優しさ、どんな風に声かけたらいいだろうっていう気づい。純粋な気持ちからくる行為だと分かっていても、いつもと違う空気の中に居続けられない。「それでも、みんなは普通に走れるじゃん」って悔しく思ったりもしてたんじゃないかなと。そんなもどかしい負の感情が身体を支配していて、悲しくてやるせないはずなのに涙も出ない。
病院近くのレストランで雨宿りしながら、ただ、ぼうっと土砂降りの外をみている。そこにそっと差し出されるコーヒー。

「私、頼んでないです」「サービスですよ」

ぐるぐる巻きの包帯に、松葉杖。すぐに怪我人とわかる。でも、そんなことはもちろん一切触れずに「きっとすぐ止みます」と静かに微笑む店長。
あきらは、その時。店長の、本当に、純粋な優しさに触れて、初めて泣けたんじゃないかと思う。何の見返りもない、暖かな優しさ。それが、あきらを救ってくれたんじゃないかと思う。そして、それが「恋」の始まりになった。

私は、あきらの「恋」は、そんな色々な状況が重なっていたから、ぶわっと燃え上がっていつもは見えていたものも見えなくなった、若さ故の暴走と、従来の押しの強さみたいなのでどんどん気持ちが盛り上がった勘違いの「恋」だと思っている。

でも、店長の腰の低すぎる情けない姿とか、ちーんと鼻水をかむ姿をみてもその思いは色あせない。挙句の果てには、みんなから臭いとお墨付きの店長のシャツを、ここだってタイミングで息深くずぉぅーーっと嗅いでみせたりする(そしてそれを店長に見られるシーンは笑った)。
どんな店長でも好きだって思える。勘違いの恋かもしれない、でも確かに「本当の好き」も少なからずあったと思う。
だからこそ、店長は、そんな彼女に対して、ちゃんと真摯に応えるべきだと思うのです。

最初は冗談だと思ってあしらってもいい。若さゆえの麻疹みたいなものだと思ってもいい。けど、日々の彼女の姿や行動を見ていたら、自分に対しての気持ちが、冗談なんかじゃなく彼女のなりの本気だってことは、分かると思うのです。

それがですよ、いつまで経っても「君は俺のことを誤解している」とか「45歳のおじさんだから」とか「……これはごめん。友達のハグだと思って」とか言いくさってるわけですよ。童貞かよ!!! 
ちゃんと向き合って、その思いに深く感謝しつつも「君とは付き合えない」って言ってやれよ。そして、その「恋」が本当の恋ではなくて、陸上を諦めるための自覚のない言い訳になっていることを、ちゃんと教えてあげなよ。それが大人でしょう。いつまでもうじうじ・うだうだしくさりおって!! 

結局あきらは自分自身でその「恋」に決着をつけて、前に進むわけです。素晴らしく強くて大人な子です。


店長のキャラクタだけでなく、演出?ですかね、それもあんまり乗れなくて。とくにラスト近くの海外のシーン。あれさ……。なんでしょう。

浜辺を昔のように無邪気に走ることで、自分の本当の想い……陸上への恋しさを想い出す。本当は陸上を続けたい。戻りたい。本当の気持ちと向き合えた。その瞬間。

「来月からシフト入らなくていいよ、来月と言わず、再来月も、その先も」

陸上に戻りなさい。あきらめてはいけない。そんな店長の思いが伝わる、すごく良いシーンだと思ったんです。あきらもこの言葉が、一歩を踏み出す勇気になったと思う。
でも、一方でこれって、完全にふられたわけじゃないですか。店長は、自分がいなくても生きていけるんだって、感じられて。勘違いの「恋」だったかもしれないけど、全部が勘違いじゃない。本当に”好き”だった部分もあった。でも、その思いも完全に断ち切られたとても切ないシーンでもあるなと思ったんです。私ちょっと泣きそうになったくらい。
でも、その時のあきらの表情が晴れやかな笑顔”だけ”に感じられて、「え!?!? あれ!? そんな感じ!?」ってびっくりしたんですよね……。なんだかなぁ……。


「恋」に溺れて、自分の本当の道を失わないように。真摯に店長とあきらが向き合う映画を、もっと観たかった。
もしくは、あきらとはるかをもっと見せてくれ!!!! はるかちゃん。彼女の友愛はとても素晴らしかった。


・好きなところ
しげさんとようちゃんの絡み。
デートの予定日に「休み」と書いているシフト表をみて、一緒に出掛けることを噛みしめるあきら。
あきらからもらったキーホルダーをカバンにつけまくるはるかちゃん。
あーな

あーな