スキピオ

工作 黒金星と呼ばれた男のスキピオのレビュー・感想・評価

工作 黒金星と呼ばれた男(2018年製作の映画)
4.5
“君の国は選挙のたびに花火(ミサイル発射)を頼みにくるなぁ。”

1992年北朝鮮の核開発の実態を探るために、ファンジョンミン演じる元軍人の商社マンが送り込まれる。

接触する北朝鮮当局の人物らは最初から警戒度マックス、主人公のスパイとして表情を硬軟使い分けた「バレないための演技」と勘づいてるかどうかわからない北朝鮮側の表情が、メタ的にそのまま韓国を代表する俳優たちの「役者としての力量」に直結しているのが面白い。バレているのか、バレていないのか、潜入ものの醍醐味が存分に味わえる。

政治サスペンスだけではなく、「同じ民族同士で分断されている悲哀」、「国を超えた人と人の心のつながり」がきちんと描かれていて、否が応にでも心を動かされてしまう。いまだ同じ民族同士で戦争中であるのは不幸でしかないけど、だからこそ映画において「結局はお互い人間同士なんですよ」とリアリティをもって同じ民族同士のドラマ、絆が描けるのは相当な強みだよなぁ。そんな鉄板ネタ、何回やられても胸いっぱいになってしまうわ!

製作は、反北の韓国政権のタイミングとかなんだろうけど、昔から韓国と北朝鮮は休戦中でありながら、ロンダリングしながらモノと金のやりとりがあってズブズブであるというのを「暴露」してしまうのがすごい。

国際関係において、平和、融和の志向がすべてではなく、「"敵"は敵のままでいてくれたほうが都合がいい」人達も確かにいるんだなと今後を見据える上で参考になった。冒頭引用の金正日の花火発言とかすごいよね。政権が変わって現在は親北の韓国政権だから…最近の軍事転用可能な物質の不透明な流通の例のニュースにも「あ…、察し」という感じになるので今このタイミングで観るのをおすすめ!