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7号室のkamicoのネタバレレビュー・内容・結末

7号室(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

『カメラの揺れと、お金』

(長文です)

「金に困っているンス」なギョンスくん観てきました!やっとです。

まずはキャストさんの話から。 tvNの人気ドラマ「ミセン」の出演者が3人登場してきたので、途中から思考がそちらに向きました。K映画ばかり観ているので他がどうかわからないのですが、そういうところありがちですよね。

エンドロールは苗字順にぎっしりと並ぶ出演者さんの紹介で、最後のお一人は日本の方でした。たしかNAKAMURAさん。映画って、感情の揺さぶりに比例するようにエンドロールの時間配分が絶妙に設定されていまよね。そういう面からいうと、「7号室」はとてもさっぱりとした作品です。

視聴前のイメージと対比すると、この系統はだいぶ笑えるシーンが多いだろうなーと半ば期待していました。蓋を開けて観ると、わかりやすくコミカルなシーンって意外とそれが少ないんです。ひと騒動おきたところで、何かしら抜け感というスパイスを投じているから、ミステリアスでにもサスペンスにもなり切らない雰囲気が漂いまくりです。それをおもしろいと感じるか、物足りないと感じるか分かれそうですね。そもそも殺人ではなく事故だったからこそ、「滑稽な犯罪者気取り」をする店長に仕立てあげたかったのかもしれない。仮に抜け感のない演出だったら、リアル殺人ものと区別できなくなる。

ギョンスくん演じるテジュンとシンハギュンさん演じるドゥシクの探り合いの中で、どれだけ面白みを見いだせるか集中しないといけない。なんとなーく観てたら多分これだいぶつまらない映画なんだと思います。つまらないっていうのは、駄作って意味ではなくって何が言いたいのかよく分からない。分かるんだけれど、だいぶ間接的だからさりげない。表現がソフトで、ワタシの印象としてはあまり韓国っぽくない感じがします。

あまり身の内や心情を吐露しない主要キャラクターがゆえに、観ているこっちに「あ、察っし」を求めているかのようでした。

だいぶ汚い場所、汚い手口、汚い考えが交錯しているようなんだけれど、別に汚いことや悪いことをしたいわけじゃない。ただそこに、厄介なお金が絡んでしまったことによる人生のこじれです。

テジュンにとって音楽が生きる術になるはずだけれど、音楽に関してはさほど触れられていませんでした。デモをレコード会社に送って、あれが後にどうなるのかまで分かりやすくは描かれていませんでした。デモを送ってすぐ、PCとシンセサイザー?の白いやつを一旦手放そうとしたシーンは、「音楽」というテジュンにとって大切なものを手放すほどの窮地に追い込まれていたわけです。一度預けたPCを再度手元に戻したことで「僕はこれからまた音楽と生きていく」っていう答えになるのかもしれませんね

ギョンスくんをキャスティングしたのは製作陣側としては結果的に大正解なんだと思います。キャストさんたちにとっても、だいぶ役者任せな感じがあったから、個を映し出していい場だと考えるなら悪い作品ではないはず。ストーリー的には面白くなくても、面白いイメージを積み上げてきた俳優さんだとワタシは思うし「でた、俳優ドギョンスのこの感じ」ってファンの方も思ったんじゃないかなこじ開けるシーンで(ドペンの方、わかったようなこと言って“죄송합니다 ”←うざ)

失礼しました。

テジュンを、演じられそうな役者さんがギョンスくん以外に仮にいらっしゃるとするなら、少し爽やかなイヒョヌさん、度胸の座ったヨジングさん、それからまだ幼いですがあと10年後のホンウンテクくんが上手くはまるんじゃないかとおもいます(母数の小ささが表面化)。もちろん、代えの効かない独特な雰囲気を常に醸し出しているのがドギョンスさんなので、テジュン役に適役でした!(あまり打たないで欲しかったけれど)。ヤクザにも怖気付かない肝の座ったテジュン、時にプロの手さばきを見せる何事も器用なテジュン、冷静沈着かと思いきや急に取り乱すテジュン、探せばいろんなテジュンに会えます。ただ、タバコとタトゥーと争いは辛い。

シンハギュンさんの出演作はまだ視聴したことがないのでコメントは控えます。これを機に観ます。

カメラワーク。常に画面が揺れていて、落ち着気のない雰囲気を表現するかのようでした。作品の内容は「緊迫」とも違う緊張感があったので、不意に「すっ...」と落ち着くようなことがありませんでした。

それぞれのタイムリミットまで、刻一刻と物事は深刻化していく様子を、この画面の揺れからも感じ取れます。

「ニンテンドー3DS」を最後の最後まで引っ張り、子ども(甥っ子)を使った象徴表現で「純粋潔白さ」につながる展開に繋げて、気持ちの良い締めでした。この終わり方にとても安心しました。

なんなら、「ヤク」と一緒に「漢江に葬る」こともできたはずだけれど、それができなかったのはキムドンヨンさん演じる中国人アルバイト ハンウク部長の誠実さ溢れる人柄によるものでしょう。

おそらくこのまま自首するのだと思いますが、死んだ彼がドゥシクを最後まで見守ってくれるはずです。ハッピーエンドっていうわけではないけれど、気分が悪くなるでもなく本当にすっきりします。

あとは、江南区狎鴎亭洞設定という「狎鴎亭」のネームバリューにしてみれば要所要所の汚さがより目立ってしまうのかもしれませんが、大金が動いていると思えばぴったりな設定なのでしょうか。ほかに出てきた地名「金浦」や「大林」はそれとは対比的なイメージと思っていいのかな?

ガソリンがかかった(であろう)ジャジャン麺とタンスユクを食べるあたり、ええええーーーー!!?ってなりました。仮に、ガソリンではないとわかっていたとしても得体の知れない透明な液体がかかったのに事が済んだら食べはじめる、すごい。

さっぱりしていたわりには、考えたいことが多くてワタシにとっては後をひく作品だったようです!

(指摘もしておきたい。日本のフライヤーではD.O.表記みたいですが、映画は俳優도견수なので、その辺そろそろ区別してもいいのでは...ネームバリューの問題?あとは、完全にティーザー負けしてました。イメージと違った!好きだけど!)

以上!



( 再編集後 追記 )

大林という街について
https://toyokeizai.net/articles/amp/126896?display=b&amp_event=read-body

東京の新大久保上野千住あたりは外国人コミュニティーの発生で、国際色豊かな街並みが多少見られますよね。まるで東京の中に国が発生するかのようで、東京の魅力の一つとして捉えることができます。

大林の場合は、東京のそれとはまた違うけれど、仁川チャイナタウンをイメージして良いでしょうか。

記事からも伝わってくる差別意識の混在。

映画の中では「(ハンウクさんの住所)大林=“(狎鴎亭から)遠いな”」程度で、ドゥシクさんの金銭的なアルバイト待遇に関しては、2ヶ月給料未払いのテジュンも最低賃金以下の時給4000ウォン台のハンウクさんも大差ないです。朝鮮族だからといって、ドゥシクさんが彼を差別しているようには見えませんでした。

ただしストーリー上、死体になるアルバイトはハンウクさんなのだとteaser諸々から容易に推測できるので「僕は朝鮮族だ」と伝えるシーンで「これって人種差別では?」と引っかからざるを得ないのは作品の狙い通りなんだと考えます。そもそも韓国国内の朝鮮族への意識レベルは分かりませんが、日本人のワタシからしたら「朝鮮族」についてこうして調べるきっかけになりました。

もしハンウクさんが日本人やその他の国籍の外国人ならば、シビアな外交問題に発展する可能性だってあるし、わざわざその国で公開されることはなかったはず。だからこそ、朝鮮族であることに良くも悪くも意味を持たせることは必要だった。

あと、これは記憶違いかもしれないけど「青年警察/ミッドナイトランナー」も大林のような異国風の土地が舞台だったかな?モンゴル系でしたっけ?(曖昧)

つい最近の、チェジュ島への移民問題もそうだけど、いろんなルーツの人が混在して現在進行形で独自のコミュニティーを作っているのは大陸の歴史を辿れば不思議じゃない。

日本のマスメディアでは、国内での人種差別系の情報は操作されている印象があるのだけれど(ワタシが見てないだけかも)、映画っていう大衆文化で自国の問題をこうやってさりげなくかつコミカルに残酷に描写したのなら、それって羨ましくなるほど凄いことかもしれない。

シビアな話は批判的な目があってこそ成り立つから、「観客に何を言われようと想定内、ぼくらの狙い通りだよ」って印象も無くはない。

あと、日本や中国絡みの設定はよくあるけれど「日本は便利な外国」なんだなと改めて感じました。そして、決して東京や大阪とは言わない。基本隣国。

日本にとって便利な外国はNY LA ロンドン みたいに都市名で言いがち、アジア圏はあまり聞かない。

以上。
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