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ある少年の告白のchiakihayashiのネタバレレビュー・内容・結末

ある少年の告白(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 自慢のひとり息子に同性愛者であることを告白された信仰篤い両親は、彼に矯正療法(conversion therapy:「改宗」「転向」を意味する)を受けさせることにした。同意して矯正施設に赴いた彼がそこで体験したのは・・・・・・。

 実話をもとに、そのような矯正施設を過去のものとするという明確な目的を持って映画化された作品。

 矯正療法を受ける青年のひとりとしてグザヴィエ・ドランがちょこっと出演しているのにミ〜ハ〜してネットで検索していたら、トロント国際映画祭のプレミア上映に、回想録を執筆した原作者の青年と彼を実際に矯正施設から救い出した母親が登場していて、そこでのやり取りにちょっとなく魅せられてしまった。いい母子なのだ。

 舞台はアメリカ南部の田舎町。カーディラーの父親は教会で説教を行う牧師でもある。そんな父親に従順だった母親が、息子のSOSを聞いて咄嗟に自分の非を悟り、その後は穏やかに、が、決然と彼を擁護する側に回る。そのプロセスが母親としての賢明さと同時に妻としての自立を示していることに静かに感嘆。
 母親とは違ってなかなかに息子のありのままの現実を受け容れ難かった父親と主人公が正面から対峙するシリアスなシーンも、かつてない父子の対話として、また父の〈敗北〉のあり方として−−−−愛が勝つのである−−−−見応え十分。

 主人公には若手実力派として活躍著しいルーカス・ヘッジズ。レースやフリルが好きで時には豹柄も着る(大阪のおばちゃん風?)母親にニコール・キッドマン、見るからに家父長的なガタイの父親にラッセル・クロウが扮し、矯正施設のセラピスト役で出演もしている監督・脚本・製作のジョエル・エドガートンともどもオーストラリア出身勢。全員スゴくはまり役。

 ちなみに監督が扮したセラピストは、自らも同性愛者だったのが「更正」して20年間矯正療法に従事していたのだが、その後再び自分は同性愛者だと認め、公に謝罪している。監督は映画化に際し、現在は男性のパートナーと暮らす彼にも会いに行った由。
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