黒田隆憲

ある少年の告白の黒田隆憲のネタバレレビュー・内容・結末

ある少年の告白(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

現在、アメリカの36州が未成年を対象とした「矯正施設」を認可し、70万人のLGBTがその影響下にある、というエンドクレジットに驚愕した。もちろん日本にも今なおセクシャル・マイノリティへの偏見や差別は根強くあるが、アメリカのそれはキリスト教という盤石な「信念」のもとに行われている分、さらに根深い問題なのだろう。自分の息子ジャレット(ルーカス・ヘッジズ)がゲイであると知った牧師のマーシャル(ラッセル・クロウ)は、彼を矯正セラピーに送り込むのだが、「男と女が結ばれて子供を授かって次の世代へと命を受け継ぐ」ことを至上命題と考えているマーシャルにとって、息子は「自分に孫を見せない忌むべき存在」であり、「神の教えに背く異端者」。悪魔払いのような、前近代的な矯正プログラムを行い自殺者まで出す施設ですら、息子を悪魔の手から取り戻す「救いの場所」だと心の底から信じているのだから闇が深い。もう、ここまでくると日本人である自分には「LGBTへの偏見や差別を無くそう!」とかそういうメッセージどころの話じゃねえな、アメリカやべえ!としか言えなくなる。監督は『ザ・ギフト』のジョエル・エドガートン。トレイ・エドワード・シュルツ監督の『イット・カムズ・アット・ナイト』で主役を演じていたが、本作では矯正施設のカリスマ(?)鬼教官サイクスも演じている。事実を基にした映画だが、実際のサイクスは現在は施設を去り、夫とテキサス州で暮らしているとのこと。

音楽が素晴らしいなあと思ったら、大部分をトロイ・シヴァンとヨンシーが手がけ、トロイは役者でも出演していた。そういやグザヴィエ・ドランも出てるしお母さん役はニコール・キッドマンだし結構豪華。ルーカス・ヘッジズくんは、令和のマット・ディロンだと思っているよ、一押し❤️
黒田隆憲

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