イギリス人ボクサーがタイで麻薬に溺れた荒んだ暮らしを送るうち、刑務所へ。
『ミッドナイト・エクスプレス』とか『ザ・ビーチ』とか『ブロークダウン・パレス』などなど、設定にも物語の展開にも既視感はあるので、ありふれた映画と言えるかもしれない。
でも。
むせ返る人いきれ、汗、血液、吐瀉物、排泄物。人の身体から出てくる湿気と熱気をもったあれやこれやが、視覚と聴覚をゴリゴリ削ってきます。
あの刑務所の雑魚寝シーンだけで、一見の価値はありかと…。
生き地獄という言葉では足りないような刑務所暮らしの中で、ムエタイに活路を見出すわけですが、それも単純に更生とか再生とか小綺麗な言葉が相応しいものではなくて、エンドクレジットに出てくる後日談も説得力がありました。
生きている限り地獄は続く。
最初にキャスティングされていた俳優が降板したために、ジョー・コールが起用されたとのことですが、つるっと可愛い童顔と役柄の荒々しさがいい感じにズレていて、とても良かった。