Jonayama

リトル・モンスターズのJonayamaのレビュー・感想・評価

リトル・モンスターズ(2019年製作の映画)
4.3
オーストラリア、アメリカ、イギリス合作のゾンビ系ホラーコメディ。

幼少期のトラウマか長いモラトリアムか9年交際したケンカの絶えない恋人とついに別れた売れないバンドマン(後にバンドはとっくに解散していたことが判明する)のデイヴは転がり込んだ姉の家で甥のフェリックスと交友を深める。
ある日送迎の折に出会ったフェリックスの担任オードリーに一目惚れしたまたま空いた遠足での引率補佐を買って出るが同じ頃現地近くの軍の基地から実験で生まれたゾンビたちが人々を襲いつつ大量に逃げ出していた…



小粒な作品を観るつもりで軽く手を出したらなんと驚き!ゾンビコメディは数あれどここまで牧歌的で和やかな作風はそうそうないのでは?と思えるかなり異色なゾンビモノだ。
例えるなら『ショーン・オブ・ザ・デッド』をさらにほんわかさせたような印象の作品。血みどろで恐ろしい目に遭っているのになんだかユルい空気の不思議な作品だった。これ、地味にゾンビ映画の新境地なのでは??

うだつの上がらないおっさんが仕事に励む美しい女性に恋をして意図せず自らを大きく成長させていくコメディ映画でよくある筋書きをゾンビモノに当てはめ、かわいい子どもたちとよく晴れた自然公園や心温まるエピソードを巧みに用いて低予算ながらとても良質なB級映画に仕上がっている。
いちおうホラー映画だが不穏なエンディングやバッドエンドもなく(どちらもホラー映画ならアリだが)、とても温かな気持ちになれる締め方が最高にいい。地味に(2度目)名シーンだ。


子どもに下品な言葉を言わせたり聞かせたりゾンビにしてブチ殺したりとヒヤヒヤするシーンがあるのでさすがにファミリー向けとはいえないがユルい作品も楽しめる映画好きの方やゾンビ映画好きは比較的楽しく観られると思う。
ゾンビの歩行速度もロメロ系ノロノロ歩きなのも嬉しい。

『アス』で強烈な演技を見せつけたルピータ・ニョンゴ演じる担任のオードリーが美しく勇気があり歌もうまくて素晴らしい。
売れないバンドマンのデイヴも個人的に好きなキャラクターだ。バンドマン補正かな(笑)
またこれまで比較的善良な役で観てきたジョッシュ・ギャッドが最後までクソオブクソなテレビタレントを好演していて意表をつかれたw俳優魂ですな。


特にヒットしたわけでもなく有名でもなさそうだが何気なく観て思わぬ当たりを引いたお気に入りのゾンビコメディだった。監督と製作陣、出演者の皆さんに拍手を送りたい一本だ。
これを観た後はTaylor Swiftの『Shake It Off』とHansonの『MMMBop』が聴きたくなる(笑)
Jonayama

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