ksana

愛と希望の街のksanaのレビュー・感想・評価

愛と希望の街(1959年製作の映画)
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ひとは自分が育った環境でしか世界を築けない
だから、ものごとを捉えるものさしが自己と他者で異なるのはごく当然のことだ

でも、それでも、
自分の境遇は、生きる環境は、宿命として目の前にたちはだかり、その残酷さは自分の努力ではどうにも変えることができないものだ
人の優しさは、その人が、"いま自分は優しいことをしている"という感情が少しでも入り混じっている行為である以上、それは皮肉にも相手の裡に溶け込む屈辱や恥辱をあらわにしてしまう

ひとは努力次第でなんでもできる
みんなちがってみんないい

そんなの幻想だ それは現実の果てを見ていないから言えることだ
ならば自分の人生は生まれた時にもう決まっている?
満たされた富や欠損のない環境こそが"良い人間"を生むもの?


そんな本質のない外套になんて興味もくそもない
わたしはめにみえないものにしか興味がない
それは
虚で腐ったこの社会が与える傷みを引き受け、人知れず耐え抜くひとの、そのこころの真髄にのみ天が与える魂
この世界のどんなものよりも醜く、そして眩い美しさを放っている
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