砂

わが悲しき娼婦たちの思い出の砂のレビュー・感想・評価

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ガルシアマルケス原作、中編小説の映像化。
私はガルシアマルケスの作品が好きなので、映像作品はどうなるのか観てみたかった。
原作の内容は完全には覚えてないが、概ね同じだったと思うのでここは割愛する。

端的本作を言い表すと、「上品なドラマ」だった。
反復される主題のワルツや、抑制の効いた色彩、フォントなどを含めて全体的に小ぎれいにまとまっている。綺麗に整理された感じはあり、映像のトーンは美しかったが正直なところマルケス作品には似つかわしくない気もした。あの独特な、南米という土地に起因するダイナミズムのようなものはあまり感じられなかった。エロティックな場面も、官能的ではあるが野生ではない。この映画には、「におい」がない。
電話を切っておきながら対話をしていたり、様々な時間が交錯して回想が行われるなど、マジックリアリズムをいかに表現するかの苦慮は見られるが、手法として何か根本的に別物であるように感じられ、いまいちしっくりこない印象だった。
話自体は改めてみると奇妙な話であるが、小ぎれいにしたことでプロット部分の歪な愛情にだけフォーカスがあたり、作品が持っていた独自の魅力は損なわれていた。
思ったより悪くはないが、期待ほど良くもない。
砂