イチロヲ

縮みゆく人間のイチロヲのレビュー・感想・評価

縮みゆく人間(1957年製作の映画)
4.0
愛妻とのバカンスの最中に、不思議な霧の中を通り抜けた青年が、日に日に身体が縮んでいく異常現象に見舞われてしまう。豆男に変身した男の数奇な運命を描いている、クラシック・ホラー映画。リチャード・マシスン原作。

人間が少しずつ縮んでいく様子を、アナログ方式の特撮で表現。演者にサイズの大きな服を着せるところから始まり、ドラマの進行に合わせて周囲のセットや小道具が大きくなっていく。編集と合成の妙により、きちんと地続きになっているように見える。

完全なる豆男に変身して、ドールハウスで暮らすようになると、「小人なりの生き方」を模索するための自己実現のドラマに転調。妻の気疲れを思えば思うほど、虚無感に苛まれてしまう、負のスパイラル。人間の尊厳を奪われてからの再起動が見どころ。

後半部では、自宅の地下室に落下した主人公が、サバイバル生活を開始。生き延びるための本能的行動に出てから、悟りの境地に至るまでの展開は、安部公房原作「砂の女」を想起させられる。
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