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千と千尋の神隠しのなのレビュー・感想・評価

千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)
5.0
 幼い頃に親戚から「千と千尋の神隠し」のDVDをいただいた。人生で初めて観た映画だった。毎週のように観ていた時期もあった。中学生の夏休み、サプライズで積善館(湯屋のモデルの1つと言われている温泉旅館)に連れて行ってもらった時の感動は今でも忘れられない。
 贔屓のキャラクターがいる訳ではなく、ただこの作品の全てがどうしようもなく大好きで、あともう少し早く産まれることが出来ていれば映画館でこの映画が観られたのに…とDVDを観るたびに悔しい気持ちになっていた。
 最近はテレビ、プロジェクター、スピーカーの機能向上に伴い、映画館で映画を鑑賞する人は減少気味だと言う。確かに映画館で映画を観るには上映時間に合わせてこちらが行動せねばならず、金額も家で観た方が安く済む。実際私も映画館で働いておきながら、家で好きなタイミングに気楽な服をきてのんびり映画を観ることの方が多かった。
 しかし千と千尋の神隠しに関しては、前述したように昔から劇場で観ることを切望していた。映画館の人工的な静寂の中に響く音と大画面であの愛する世界観を味わいたかった。
 そして本日、念願かなって映画館へ観に行くことができた。席は目の前に広い通路のある後ろ側のブロックの最前列中央を取った。神様の登場シーンや河の神様の存在感を全力で体感する為である。
 親の声より聴いたサントラ(誇張表現)、ほとんど暗記した台詞、コバルトブルーの青空、美味しそうな謎の料理…全てが、はじめて観た時と同様のワクワクと感動を連れて来てくれた。いや、それ以上だった。
 映画館の音響は想像以上で、まわりのざわめきひとつひとつがとてもリアルに聞きこえてきた。普段はDVDで鑑賞していたため、新作映画を映画館で観た時よりもさらに音響の素晴らしさを実感することができた。陳腐な表現だが本当に、まるで自分が油屋にいるような感覚だった。
 幾度となく観た思い出の映画は今日、最高の記憶を更新した。映画館で千と千尋の神隠しを鑑賞できた今、新たにできた後悔は、はじめて千と千尋の神隠しを観たのが映画館では無かったという事実だ。「一時的に千と千尋の神隠しに関する記憶を全て抹消した状態で映画館で千と千尋の神隠しを鑑賞する」という絶対に叶わない夢ができた。

 こんな文ではこの溢れる感動を1%も表せていない。そもそも作品についての感想が全く書かれていない。しかし千と千尋の神隠しを前にしては全ての言葉は線の集合であり、千と千尋の神隠しの魅力を語るには人類はまだ若すぎるのだと痛感する。

 また、ずっとテレビで観てきた映画を映画館で観られるようになったことにより、映画館の良さが再確認されるのではないかと思う。なかなか映画館に行きづらい世の中だが、是非たくさんの人に映画館で映画を観る素晴らしさを経験してもらい。映画館よ、永遠であれ。
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