Ryo

スパイダーマン:スパイダーバースのRyoのレビュー・感想・評価

4.0
リープオブフェイスと多元宇宙

スパイダーマンを使った哲学的な映画。

ーなぜ靴紐を結ばない?ー
父は警察官で、エリート校に転校させられ勉強し、色んな期待を掛けられていました。(本の大いなる遺産は原題great expectations で大いなる期待という意味からここで示唆するように仕向けている)その為主人公はわざと0点をとったり靴紐を結ばなかったりときちんとしようとせず周りに反抗していた。

ーリープオブフェイス(信じて飛べ)ー
リープオブフェイスはさまざまな映画で使用される事のあるテーマ、言葉です。マトリックスでは今現実だと思ってるこの世界は全て脳にコンピューターで繋がれたバーチャルの世界である。それを信じればなんでもできる、高いビルの上から飛び降りる事もできるんだ。信じて飛べ。というテーマがあります。
アメリカ映画におけるこの行動は主人公の転機を表すことがほとんどです。安全で波風の立たない人生からどうなるかわからない冒険に勇気を持って飛び込む事を表している。

ー人生を生きる意味ー
リープオブフェイスという言葉が生まれたのは19世紀の哲学者ケルケゴールの言葉でした。何故この言葉が生まれたのか?19世紀は科学の発展により論理的な思考を持つ人が増えました。
それにより抽象的なキリスト教や神という教えは衰退していき人々は神を信じられなくなりました。しかし信じることをやめた場合生きる希望や意味を見出せなくなってしまうのではないか?生きる目的がはっきりせず絶望に駆られてしまうのではないか?ならば不合理な真実だからこそ信じて飛び込んでみるのがいい。ということで作られた言葉になります。

ー人生は生きるに値するかー
これは多元宇宙論と密接に絡んできます。
多元宇宙論とはウィリアムジェームズという哲学者が言った言葉です。
ウィリアムジェームズのエッセイで「人生は生きるに値するか」という題目があります。その中では「この世界ははっきりと善悪が別れない曖昧なもので、人によって価値は違ったりする。それは同じ現実の中に沢山の世界があるかのような多元宇宙的である。その中でどう自分を見つけ出し生きるに値するか」を説いている。人によって見えてる世界は違う。だから人々は誰一人として同じ人はいないし考え方の違いで喧嘩や戦争が起こったりもしている。これは人の数だけ宇宙があるんだと言っています。

生きるに値するか悩んでるよりも信じて行動する事で価値ある人生になるかもしれない。行動しなければ0%だ。

ーキリスト教との関連ー
キリスト教は自ら教えを説き十字架に掛けられ死にました。しかしその思いは語り継がれキリストになりたいとキリストを目指す信仰者が現実にはいるのです。
それはこの映画におけるピーターパーカーです。ピーターパーカーの死により新しくスパイダーマンを目指す子供が出てきたのです。映画内で何回も出てくるスパイダーマンは誰でもなれる。というセリフに繋がるのです。

神とスパイダーマンの違いは唯一無二かそうではないかという事です。

ーこの映画で伝えたかった事とはー
今までは神を信じまじめに生きれば神様の計画通りに恵みを与えてくれ幸せに暮らせるんだと信じられていました。しかし南北戦争や虐殺、人種差別を人類は経験し神を信じられなくなります。この世には悪や不幸が混沌してる事に人類は気づいてしまうのです。だから信じる「意志」が大事なんだと。子供のように純粋で世界をただ信じているのも大人になり世界の裏側を見て信じる事を決断しなければなりません。確かに人生には使命や目的があるかは全くわからない。それでも人生には意味があるんだと信じて飛ぶ事が大切なんだと伝えています。

ープラグマティズムという考えー
神は本当にいるのか?世界を変える為に救いたいがその後どうするか?これは善か悪か?など考えても仕方ない。とにかく信じて飛び込め。行動する事が大事なんだという考えがアメリカのベースとなり、思想より行動なのです。

信じる根拠より信じる意志が大切。

自分の人生は特別な意味があって幸せなものになると信じて行動する事が大切でそこに行動を裏付ける根拠は必要ない。
Ryo

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