スウィンギング・ロンドンで盛り上がるイギリスが背景にある本作は、マイケル・ケイン版『アルフィー』を観た後に観るとより深く楽しめるでしょう。共にスウィンギング・ロンドンの享楽主義的な側面を切り取りつつ、その側面が孕む影も描いているので。
ジェンダーの観点からも議論できる『アルフィー』と比べれば、本作は表層的で深みが足りないと思うけど、冷徹な眼差しを通すことで、楽しいはずの光景に潜む気持ち悪さや狂気、さらに不条理を浮き彫りにしている。こうした冷めた客観性を表象するのが、主人公のトーマスであり、写真家という彼の職業だと思います。
また、ヤードバーズの演奏シーンは、大衆心理を揶揄しているようで面白い。今でいう地蔵みたいに突っ立ってるだけの観客たちが、突如変貌して壊されたギターを奪いあうところですね。このシーンには、享楽主義の闇が滲みでているように見えてしまう。このような隠喩がたくさんあるのも本作の特徴です。
それにしても本作の編集、今の10代が観るとどう感じるんでしょうかね。“インスタで短い動画を連続で見てるみたい!”と思ったりして。