いけたろう

志乃ちゃんは自分の名前が言えないのいけたろうのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

ひとのコンプレックスを笑うということがどれだけ他人を傷つけ、自分を傷つけるかを真摯に描いていて、なんて道徳的な映画なんだ、と思った。

今までひとりだったひとについて、他者との関係が急激に築かれていくことで感じたことのない苦しさ(たぶん嫉妬とか後悔とか)に振り回されてしまうんだろうなということは理解できるし、志乃ちゃんのキツさは志乃ちゃんにしか分からないキツさなんだと思う。わかって「あげよう」という歩み寄りの一歩目からの踏み外し感。先生という職業も大変だと思う。

最後、加代ちゃんの本当の意味で志乃ちゃんを思う献身のお陰で、志乃ちゃんは自分の影(自分が自分を追いかけてくる)を無意識の中からみんなの前で主張として引っ張り出すことができたから、これからどんどん良くなっていくんだろうな。そんな単純なものではないだろうけど。それが垣間見えた「ありがとう」だった。嬉しかった。

菊池くん本当にうるさいし本当に苦手なタイプなんだけど、彼の取ってしまうスタンスもすごくわかるし、ひとつ自分の壁を越えないといけないんだけど、ひとりになったときの思い悩む表情を見ると応援したくなってしまった。

そんな志乃ちゃんも菊池くんもフラットに受け入れる加代ちゃんがいちばん寛容。加代ちゃんの器のデカさを規範として生きていこうと思う。

主演のふたりの真に迫る表情はもう既に一級だった。常に画面が最高だった。

すごく素敵な映画だった。
よかった。よかった。