うべどうろ

未来のミライのうべどうろのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
3.4
 細田守監督の作品では、たぶんこれが一番好きだと思う。ひたすらに、家族の物語が丁寧に置かれていく感じがとても実直で、とても私小説的な輝きをもって物語られる日記のような大切な手触りを感じたからだろうか。加えていえば、「建築」という概念も素晴らしく巧みに導入されていた。家に持ち込まれる「上」と「下」あるいは「内」と「外」の概念や、深く深く潜っていく、あるいは高く高く昇っていく、というTREEの感覚は、家系図ともいうべき視覚的な歴史の時間を感じさせる美しさがあった。
 そういった丁寧で細やかな構成のなかで語られる「家族の物語」が僕は好きだった。それぞれの話に疑問は感じつつも、全体としての小ぢんまりとした美しい人生賛歌が好きだったのだと思う。これから「生きていく」主人公を、家族の歴史が導くという発想は、偶然の連続たる人生の「必然」とも思われる“脈々と”を捉えていたように思うからである。
 その一方で、人間描写の雑さはなんとかしてほしい…。主人公の年齢考察だけでなく、キャラクターのなんともいえない魅力のなさというか、、、は、無視できない悲しい事実として突き付けられているように思われた。残念ながら、今回もまた僕は誰にも感情移入することはなく、シンプルな巧さだけが光ったように感じられた。
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