ここ最近、(当然私の鑑賞偏重があることは前提として)“家族”を主題とした映画が多いと感じていた中で、今作ではどのような姿が描かれていくのかを期待して観た。
なぜ昨今集中的に家族の映画が多いのかということはコントラバーシャルではあるが、どうしても素晴らしい作品であった「万引き家族」や「Wonder」といった作品と比較することになった。
んー。
結論から言うと、現代における家族像を描く上での新しい観点を提供できているものとは言えない作品だった。
家族が増えることで、自分への愛情が低下したことに駄々をこねる主人公。新生児に悪戦苦闘する両親、育児がうまくいかない父親とそこから起こり来る夫婦間の喧嘩。子供の成長に見せる感動。
当然それを描くとは素晴らしく、子供から大人までが見る映画として、また見る世代、子供の有無によって見方が変わる多層的な映画にはなっていただろう。しかし、家族像は刻々と変化していくものであり、映画とは世間の潮流に関わりを持つものである以上、描き方に工夫が必要だったと思うし、この映画が面白くない一つの理由であった。
映画とは一つの観点を提示し、そこから日々の生活に何かしらの影響をもたらしてくれるものであるから、私も何かしらの考察をもたらしたいとは思うのだが、その“観点”がこの作品には全くなかった。
両親、祖父母さらにその先の先祖の偶然によって今の私がいるのだ、というのが今作のキモだったのだろうが、そんなことは今更言われるまでもなく意識してる部分である。工夫がない。
私は基本的に他人の評価を気にせず映画を観に行くが、今回各所の映画レビューサイトで酷評が目立ったのは致し方ない出来栄えだった。
宮崎駿が次回作で最後になるのはほぼ確実で次世代のアニメーション監督の巨人を必要とする日本において、彼の存在は重要なことに変わりはない。次回作に期待したい。