KENN

未来のミライのKENNのネタバレレビュー・内容・結末

未来のミライ(2018年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

細田守作品の特徴として
圧倒的引き絵
家族愛
二つの世界を行き来する主人公の成長ストーリー
があると思う。
家族愛と二世界を行き来する主人公が大まかなテーマ(サマーウォーズしかりバケモノの子しかり)で、それを元にストーリーが構成され、細かなメッセージ性を感じる良さがある。

今回の未来のミライはどうしたことか、今までの細田作品以上に突発的なトリガーに違和感を感じた。(例えばベターなものでいえば、未来の世界を救うためにやってきた未来人が、現在の状況を変えに来るとかそういうきっかけや、未来人が現在に来る理由が全くない)
というのも、まず主人公のくんちゃんが未来のミライちゃんに出会うきっかけ(理由づけ)がすごく無理やりというか、なんなら意味がわからない。
(ここでは婚期が遅れるから雛人形をしまってくれという部分)

この物語はある意味オムニバス的作品という捉え方もできるかもしれない。
過去や未来に行って、主人公はいろいろなことを経験する話がいくつか組み合わさってこの作品はできている。
しかし、それならそれで、ミライの存在は必要であったかは疑問が残るし、仮にあったとしてもミライの登場の仕方や、細田さんの好きな動物である飼い犬の人間化もストーリーとの関連性はいまいち掴みずらい。(てか細田氏がただのケモナーなだけなのでは?とさえも思える。)

主人公の成長物語かと思ったらはずっと幼児のままで終わるし、主人公のくんちゃんが大きくなった姿(未来の姿)も映されるが、その過程でどんな経験を経て主人公のようなやんちゃ坊主があんなクールなイケメンになるのかがわからないし、その過程を描いてこそが細田守作品なのでは?と思ってしまった。
(あとくんちゃんって名前呼びにくいだろ。「くん」なのか「ちゃん」なのか「ペコ」なのか「りゅうちぇる」なのかはっきりさせてくれよ。)←ペコアンドりゅうちぇる関係ないだろ。


細田作品のお父さん像は草食系なよなよ貧弱男子だが、今作もそうだ。それにより現代的パパ像を描くのはわかるのだが、父親が刺さることを言うわけでもなければ、行動で示そうとするわけでもなくキャラクターとしての存在感はあまりない。残るのは星野源の声だけだ。(あんなにも星野源すぎると逃げ恥連想しちゃうからやめてくれよ。)
逆に過去に遡った時に出会う、ひいおじいちゃんと位置づけられてる人物に乗り物に乗るときのコツを教えてもらうシーンの方がよっぽど父親を感じられた。

ミライがくんちゃんに過去にひいおじいちゃんが戦争から生還してなかったら私たちはいなかったし、とか、過去があって未来がある。というテーマはわかったが、もしそのテーマを伝えたいのであれば、過去と現在の中で描けばいいし、未来の存在は必要なのかがすごく疑問点だった。
(あと、そういう説教じみたセリフは登場人物には言わせちゃダメだと思う。視聴者側が感じ取るべきものだから。)

良かったのは、
今まで家族間での家族愛が主に重点化していた。今作では家族愛や大きな範囲の家族愛(ひいおじいちゃん)などのつながりはもちろん、先祖の奇跡のようなつながりによって今生きている(今の自分は存在する)というメッセージ性は家族愛の拡大解釈的観点で、進化した家族愛とでも言えるメッセージとも捉えられたことだ。

しかし、
主人公のくんちゃんはそういったタイムトラベルの経験からの学びによって少し成長する(物事の分別や、価値を知る)のだが、そういうものってタイムトラベルからでなくて、両親から学ぶべきなのでは?と疑問に思ってしまう。

あとこの過程の設定が、結構成功者の家で、どこか貧しい暮らしの中で教訓を見出すのでもなく、平穏無事に満ち満ちた暮らしの中で展開するし、場面も家の描写ばかりである。強烈的に社会に訴えかけるテーマではないことは確かだ。ゆるい。
そこがなんだかなぁポイントでもあるなぁ

とにかくシナリオを取っ払って演出と世界観と作画で勝負した結果が今回だ。

確かに自分のクソガキ時代を振り返ればくんちゃんに感情移入はできるが、話が進むほどなぜか主人公がやりすぎではないかと思えるほどわがままなガキに見えてきてしまう。

色々まとまりなく語ったが、作画はそれは素晴らしかったし、風景画や、空の青さの表現や、あの柔らかい雪の結晶まで繊細な表現がなされていて素晴らしかったし、ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんの結婚秘話みたいなのも良かった。

残念ながら涙脆すぎる自分は泣いてしまったシーンもあったが、でも今までの細田作品以上に疑問点が多すぎて困惑してしまう作品だった。
KENN

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