ヤマギワ

未来のミライのヤマギワのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
3.3
「万引き家族」ならぬ「裕福家族」に生まれたクソガキの話。
かなり酷いことを言ったが、filmarks内で酷評されてる程、つまらない作品とは思わなかった。

まずギャグがそこそこ笑える。一部、舌打ちしたくなるような寒いノリもあるが、間の取り方とかギャグ演出は、なかなか良かった。

作画も相変わらず凄い。特に家の中の美術の細やかさたるや。多分、本職の建築家とか呼んで、きっちり設定詰めたんだろうなと思う。
あと細田守監督の未来感というか「サマーウォーズ」でいうozっぽい描写が好きで
、今回も駅の構内とか、結構ワクワクしたし、不意にゾクっとするような演出は細田監督いつも巧い。

ただお話は正直お粗末。『くんちゃん』なる4歳児が家にある〝不思議な中庭〟を通して、家族の過去や未来を巡るっていう話なんですが。

細田監督が思いついたエピソードを、そのまま映像化したってだけような感じで、物語の構成とかが、まるでない。
大きく分けて5つのエピソードがあるが、最後以外は、順番バラバラにしても、大して影響ない。
『くんちゃん』が妄想?時間旅行?をする理由もほとんど一切説明されないまま、急に物語が始まるのも、腑に落ちない。
そんな無茶苦茶な構成でも、なんとなく観客を惹きつける演出には、恐れ入りますが、個人的には脚本は、本職の方に任せた方がいい気しますね。

あとは、この家族って凄い裕福ですよね。横浜に一軒家を建てて、美味そうな飯やシャレオツな菓子を食って。別に裕福な家庭が〝悪〟というわけでは、もちろんないんですが…
ただ「万引き家族」のような貧困や差別などの苦しい環境で、生き抜く人たちの映画が世界的に評価されている昨今で、この映画を撮る意義ってなんなんですかね。
テーマが時代と逆行している割に、細田監督の伝えたかった強い想いのようなものは、あまり感じなかった。

見終わった後の気持ちとしては、これは「細田守」が撮らなくてはいけない映画なのかしらということ。正直、細田守監督の家族路線は、もういいよという気持ちが強く、別のジャンルにそろそろ行ってほしい。父・母・兄弟と一通り撮ったし、区切りもいいんじゃないでしょうか。

次はSFにしましょう!SF!
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