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人魚の眠る家のmoのレビュー・感想・評価

人魚の眠る家(2018年製作の映画)
4.3

【狂ってでも、守らなければいけないもの】


会社経営をしている播磨和昌と妻の薫子は、2人の子供に恵まれるも、離婚の危機を迎えていた。
ある日、長女の瑞穂がプールで溺れ、医師から脳死を宣告されてしまう。
迷った末に臓器提供を決断した和昌と薫子だったが、別れの瞬間、瑞穂の指が動くのを見た薫子はその場で臓器提供を拒否。
延命治療を施された瑞穂は、"長期脳死"として眠り続けたまま成長していく。


今年いちばん泣いた〜。大泣きです。
私は親ではないけれど、子供を産める歳になって、周囲に母親が増えてきた今、親が子供をどれほど大切に思っているか、そして親より子供が先に逝くことがどれほど辛いことなのかは重々わかっているつもりでした。
それでも、それでもこんなに辛いとは…



さすが東野圭吾が原作なだけあって、中盤は狂気じみた不気味な演出から、後半にかけて怒涛の展開と種明かしが用意されています。
とても難しいテーマを扱った作品なだけに、篠原涼子をはじめ西島秀俊、松坂慶子ら演技派も全力で臨んでいて、それに応えるような子役たちの演技も素晴らしかった。
上手いなぁと思ったのが、播磨夫妻が一度は臓器提供という道を選んでいるということ。(臓器提供を決断するにいたった瑞穂のエピソードも超泣けます…)
だけど実際、あんなタイミングで指が動くのを見てしまったら、どんな強い覚悟も揺らいでしまうのも納得です。
播磨夫妻のような形で延命治療を選んだ人たちも、世の中には沢山いるんでしょうね。


それに、目覚めることはないと言われ続けても介護を続けることって、精神的にも身体的にも相当キツイはずですから、その向き合い方は、決して死を受け入れられない故の"逃げ道"に対するものではないと思うのです。
臓器提供も延命治療も、どちらも同じくらい勇気が必要な選択です。
それだけに、世の中の臓器提供をしない人たちに対しての否定的な意見は、あまりにも端的すぎるというか、個人的に残念でなりません。


この作品を観たあと、"長期脳死"についての記事をいくつか読みました。
播磨夫妻のように、悲しみを抱えながら脳死に向き合っている人たちが沢山いて、私の中でより一層作品が現実味を帯びるとともに、生命の在り方について改めて深く考えさせられました。
辛すぎてもう一度観る勇気はないけど、いいキッカケを与えてくれたことに感謝したい作品です。


ちなみに帰って母に映画の話をしたら、話だけで泣いていました…
親になって観たらきっともっと辛いだろうな…
落ち着いたら原作も読んでみようと思います。
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