菩薩

1987、ある闘いの真実の菩薩のレビュー・感想・評価

1987、ある闘いの真実(2017年製作の映画)
4.6
普段は泣きたくなればその衝動に身を任せ思う存分泣いてやるってのが映画鑑賞における主義なわけだが、この作品は泣くまい、泣かない、泣いてたまるかとひたすら耐えながら目の前の圧力を受け止め続けた。んでまぁ結果、そんな無駄な矜持はエンドロールで崩壊した。

この作品と同じ様な事件が、2007年にこの国で起きた事を覚えてらっしゃる方がどれだけいるだろうか。時津風部屋力士暴行死事件、大相撲時津風部屋に新弟子として在籍していた序ノ口力士の少年が、愛知県犬山市の宿舎で暴行(私刑)を受け、死亡した事件である。新弟子リンチ死事件とも呼ばれている(wikiより転載)。あれから11年、未だに大相撲は「国技」の名を背負い、相撲協会は存続を続け、2014年には「公益」の名を課され、この国の伝統文化の普及を定款上の目的として活躍しているらしい。そんな相撲協会の襟を正すべく、正しい未来へ導く為に一石を投じようとした平成の大横綱こと貴乃花が、協会の圧力に屈し退職に追い込まれた。正しい事をしようにも、間違えている事に間違えていると言おうにも、流れに逆らい反旗を翻し己の意見を言おうものなら、出る杭は打たれ抜かれそして捨てられて行くのがこの国の文化、伝統になってしまっているのだなと、改めて個人的に強く意識させられる事例である。

やれ芸能人が政治的発言をしようものなら「生意気だ」と罵られ、SNS上では右と左に別れた本来は「言葉の力」を持つ者同士が不毛な削り合いを続け、一市民が政治に関心を持てば「暑苦しい、ダサい」と唾棄される、それで良いのか日本人よ?本当にそれで良いのか。老い先短い老人達は「今」しか考えず、若者達も目の前の「今」に甘んじて生きている、ならば「未来」は誰が作るのだ?おかしい事におかしいと言わないままであれば、世界は何も変わらんのだぞ。国民が正しい政治を作らなくては、間違えた政治が簡単に国民を殺していく事になる、オリンピックまであと二年、改憲に向けまた新たな「独裁」が始まったこの国はどんな未来に進むのか。日本人は何かを思い出すべきである、そして学び直すべきであり、そして動き出すべきである。国を変える事は非常に困難でも、人の意識を変える事は出来る、どうかその手にある民主主義を放棄しないで欲しいと切に願う。
菩薩

菩薩