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トム・オブ・フィンランドのmemoのレビュー・感想・評価

トム・オブ・フィンランド(2017年製作の映画)
4.7
ゲイアートの先駆者、ゲイ・カルチャーのアイコン的存在であるトム・オブ・フィンランドの伝記映画。ポスターのデザインがおしゃれで惹かれて軽い気持ちで観ましたが、すばらしかった!🏳️‍🌈

同性愛が法律で禁止されていて見つかれば厳しく罰せられていた当時のフィンランドで、彼は欲望を絵というファンタジーに乗せて発散していた(するしかなかった)のだが、いつか盗まれた彼の絵が知らないところで世界に広まっており、ゲイの人々に「希望」と「誇り」を与えていた。そしてそのことがきっかけで自身の「解放」へも繋がっていく、という流れには「アートが持つ力」みたいなものも感じる。フィンランドから初めてアメリカを訪れたときに見た自由で解放的なゲイの姿は衝撃だっただろうな…(人前でも警察の前でも同性愛として堂々としていられる、連行されない)。ファンの言葉「あなたの絵を見て初めて自分を美しい存在だと思うことができた」も印象深く残っている。絵のなかでポジティブに美しく堂々と描かれる男たちの姿に、生まれてからずっと軽蔑の対象で隠れているしかなかった自分という存在(とセクシュアリティ)が認められると感じられて救われ、勇気づけられた人たちが本当にたくさんいたんだと思う。終わり方も最高〜!

映像、音楽、台詞どれもよくて、内容もセクシャルマイノリティへの無理解と軽蔑に闘ってきた人たちのこと、その歴史的背景について丁寧に描かれている作品だと感じました。トム・オブ・フィンランドのこともゲイアートという単語自体も知らなかったため、学びも多かったです。

戦争体験、トウコが想像して作り上げてる男性の姿(街で見かける魅力的な男性をきっと妄想、想像しながら自身の絵に落とし込んでいた。すれ違う男性たちがみなカメラ目線でこちらを見ているのが面白い)、妹が水面に見つめるふたりの姿など、映像の詩的な表現がいい。台詞に忍ばせる皮肉もセンスがよくておしゃれ。

ずっと女々しいからいやだと却下していた黄色いカーテンをついに愛する人とふたりで買いにいった場面がとても素敵だった。初めて外で手を重ねる、店員のおばさん、カーテンのリングのやりとり。悲しい展開でもあるからこそ、永遠の愛を誓いを思わせる言葉の使い方に思わず泣いてしまった。うつくしいシーン…
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