このレビューはネタバレを含みます
是枝監督の中では他よりこれがすきだと思った。
後半はずっと、花火の音だけを聞いてはしゃいでいた、夜の中に薄くともる家族の姿を思い描いていた。
「産まなきゃ母親になれないでしょう」なんていう池脇千鶴の役は、浅慮でバカみたいに幸せで偏見と固定概念に満ちた社会の縮図みたいで反吐が出た。役の話です。
リン(じゅり)を虐待して愛さない母親と
万引きを容認して貧乏でも愛していたおんなと
どちらが正しいかは測れないけれどそれでも。
「戻りたいって」と女の警察官から言われた時の安藤サクラの
「…あの子は」がたまらなかった。
言葉にならない。
かなしかった。
こんな映画、今であっても遅い。
もっとずっと昔に 、怒鳴り声や罵声や物を叩く音に耳を塞いでいた深夜とか
大きな音で閉まる扉の音を怒りのバロメーターにした毎日とか
「はい、うん、そうやね」と肯定したそのあと振り返って憎々しいと言わんばかりに相手を詰る顔を見つめた時とか
毎日毎日家族とか血の繋がりとかを考えてしにたくなっていた日々に見たかった。
もう遅い。こんなのは。
「命の危機がないなら我慢しなさい」
「親だって初めて親やるんだから誤ることもあるだろう」
なんて周りは言ったけど、
こどもの健全で健康ななにかをそこなう理由にはなに一つならないことをもっと早くに知りたかった。
もっと早くに観ることが出来ていたら、損なわれたものは少なかったかもしれない。