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万引き家族のAOのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.7
1、映画の“訴求力”の凄まじさ
“家族って何”“血の繋がりって何”“絆って何” …終始否応なく訴えかけられる。これは紛れもなく誰にでも関係のある普遍的なテーマの作品だ。血の繋がった家族にさえ虐げられる子どもたちはどこに救いを求めればいいと言うのだろう。絆を求めて寄せ集まって家族になろうとしても、あらゆる善意や悪意によって断絶される。誰が子どもたちを守ってくれるというのだろうか。社会?法律?学校?養護施設?映画に登場するような行き場のない子どもたちが現実にいると思うと息が詰まりそうになる。

2、仮初めの“居場所”
スイミーのように一人一人は小さな存在でも寄せ集めって力を合わせればどんな不条理も乗り越えられる、目をキラキラさせながらスイミーの本を読む祥太の顔が目に焼き付いて離れない。たとえほんの仮初めでも“居場所”を見出しつつあった子どもたちに酷い現実を突けるくらいだったら、本当の家族といる以外生きる術がない現実と向き合い続けさせる方が幾分かマシなように思えてくる。果たして2人にとってどちらが幸せと言えたのだろう。

3、子供たちの成長
蝉が脱皮するかのごとく成長していく子供たちと、堕落の一途を辿る大人たちのコントラストが見事。樹里とセットで描かれるビー玉は過酷な現実に引き戻されても曇りのない心を持ち続けるということの暗喩であってほしい。

4、何が“正しい”のか
世間一般で見れば、万引きして年金を不正受給して人を殺めて...数え切れない罪を重ねた救いようのない人たちなのかもしれない。ただそうやって善悪という尺度で簡単に片付けてしまっていいのだろうか。いや、今まで自分はそうして臭いものに蓋をして多くの問題を片付けてきてしまったのではないか、そう思わせられた。
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