彼が愛したケーキ職人のまのネタバレレビュー・内容・結末

とてつもなくお芝居が素晴らしかったです。
露骨な表現が一切なく。

苦しくて悲しくて孤独な人ほど、日常でそれを出さないんですよね。
それを冷めてるとか無表情という人もいるけど、呼吸や目に表れる内圧を見れば実はとてもわかる。
セリフだとかわかりやすい表情だとかよりよっぽど雄弁。
だからこそトーマスが感情的になる終盤のシーンがめちゃくちゃ効いている。

トーマスの行動を箇条書きにしたら結構怖いと思う。でも全然そう思わない。純愛ゆえ。
ただ好きな人のことを知りたかったのかな。好きな人の好きな人。でもその人を知っていくとその人自身のことを好きになる。

恋人を求めていたのか、家族を求めていたのか。でも得たと思えた先にあるものがまた苦しくて。
知った分、知る前より孤独かもしれない。
アナトはあの後どうするのかな。
みんな幸せになって欲しい。

全てを描き切らない、余白があるからこその素晴らしい作品だった。