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黙秘のYMのネタバレレビュー・内容・結末

黙秘(1995年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

スティーヴン・キング原作の、たとえば「インソムニア」とか「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の舞台のような寂れた島で起こる事件を描いたサスペンス。
静かなのにピリピリとしていて、なにが起こるかわからない、なにか嫌なことが起こりそうという緊張感たっぷりの映画だ。

「キャリー」のあのおばちゃんが印象深いキャシー・ベイツが、殺人の疑いをかけられる胆っ玉母ちゃん役を怪演。
セリーナ役のジェニファー・ジェイソン・リーも、母を信じきれずにいるままで嫌疑を晴らそうとし、そのまま、忘却させた過去と向き合っていく姿を静かに演じていて素晴らしい。

口が悪くただの怖いお母さんに思えるドロレス、ドロレスが22年島で仕え、最後に殺したと言われる老女ヴェティ、NYで辣腕記者となったドロレスの娘セリーナ。
3人の女がもつ秘密の真相が断片として散りばめられているのだが、映画は「20年前の皆既日蝕の日」「ヴェティ事件当日」「現在」の3つのパートを入り組ませながら進んでいき、その見事に入り組んだ回想シーンの果てに、導入部では想像もつかないところですべてのピースがピタリとハマり、ようやく全貌が見えてくる。

それは意外にも現代的な問題意識を、1995年の映画ながら、通奏低音として内包している。「わたしが女だから、通帳紛失届を夫が出してきてもわたしに連絡一本だってしなかったんでしょう?」。
「ときには悪女になることも必要よ、ドロレス」「ありがとう、ヴェティ」(この"ヴェティ"の使い方が、巧い)。22年ものあいだ「悪女」ヴェティとドロレスが保持しつづけた秘密。ドロレスの娘へのほんとうの想い。

そうしてすべてが明らかとなったあとの、多くを語らずに母娘の想いを仕草のみにて交わさせたラストの静謐な描写。締めくくりにはこれ以上ない圧巻で、深い感動をもたらした。キング原作映画のなかでいちばん好きになるかもしれない。
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