ぴよ2522

ラ・チャナのぴよ2522のレビュー・感想・評価

ラ・チャナ(2016年製作の映画)
3.8
以前5年ほどフラメンコを習っていたことがあり、スペインのセビリアまで本場のフラメンコを観に行ったこともある。
その時に行ったタブラオ「ロス・ガリョス」はヒターノ(ジプシー)のダンサーも出演する老舗の店だった。
今回ラ・チャナを観て、私は何にもわかってなかったなぁと何だか遠くを見てしまった。
フラメンコがヒターノにとってどんな踊りなのか。
何をぶつけているのか。
どんな想いがあるのか。
深く考えないで習ってたな。

フラメンコの歴史も有名なダンサーも知らなかったからこの映画を観るまで彼女の存在も知らなかったけど、とにかく圧倒された。
技術的な部分はもちろん、人生をまるごとフラメンコに捧げた生き様にも。
いや、フラメンコに捧げたというよりも「フラメンコしかなかった」のか。
ヒターノとして生まれて男社会の狭い世界で踊りに出会い才能を開花させ、得たものも大きいけど多分その分何かをしっかり失った人でもあると感じた。
私にはこれしかないと思えるものに出会えたことは最高の幸福だけど不幸でもあるのかもと最初の夫との別れや娘さんのインタビューを観ながら考えた。

人間技とは思えない超絶速いサパテアードを踏み鳴らしながら頭の位置は全く変わらない舞いに魅入ってしまった。
多少なりともかじったことがあるので余計にその凄さが身にしみる。
劇場のスクリーンで観たらどれほどの迫力だっただろう。
生で観たらどれほどか。
歳を重ねて糖尿病を患い膝が思うように動かなくなって立って踊れなくなってもステージに立つラ・チャナ。
(椅子に座りながらの超高速サパテアードの方が立って踊るより難しいと思うんだけど)
誰も彼女から踊ることを取り上げられないのだな。
途中、ピアノ曲ラ・カンパネラに合わせて踊ったりエンドロールではドラムの音で踊ったり、それでもしっかりフラメンコだったのが素晴らしかった。
もう一度フラメンコを始めたくなった。
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