扇

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドの扇のレビュー・感想・評価

4.4
タランティーノ本当に面白いな。忙しかったとはいえ、なんで私これを劇場で観てないんだろ。

虚実の入り混じるこの感じ。
リック・ダルトンは落ち目を感じながらも演技に自分の置かれた立場をトレースして最高の演技をする。嘘に本物を持ち込んでいる。
クリフはかつての撮影所に足を運んだ時にヒッピーに囲まれるがその絵面は完璧に西部劇そのものだ。作り物と実物がその境を失って不思議な空間を作る。
それがラストに繋がる。

曖昧さを増した世界は現実とは違う結末をもたらす。タラがバスターズでも使った手。
ラリったクリフの「あー、お前らは現実だな!」との言葉に返す口が「ドーナツみたいに現実だよ!」爆笑してしまった。
言葉としては意味不明でおかしいが、台詞の意図としてはドーナツは空洞を含んだ食べ物、虚実が混じったものだから、そういう意味かなと解釈した。

もう役者人生が「終わる」彼らがフィクションではなく、彼らが演じた存在そのものになる。なんとも熱い展開だと思う。
扇