ぴのした

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのぴのしたのレビュー・感想・評価

3.9
見た直後はインタビューの内容とかに引っ張られて素直な感想が思い浮かばなかったんだけど、夜の街中をサントラかけながらドライブして気づいた。

まるで自分がブラピになったような気がして、チッチと舌を鳴らしながらどこまでも車を走らせたい気分になる。ダッシュボードには足を乗っけたい。そういう、カッコよさに憧れる楽しみ方ができる映画なんだ。

聞いていた通り、内容はあるような無いような話だった。ラストはキルビル的な痛快さがあるけど、それまではのんびりオールドアメリカンの日常を楽しむ映画。

69年のハリウッドはタランティーノにとって幼少期の思い出が詰まっているらしい。僕にとっては母が生まれた年で、監督本人のようにノスタルジーを感じることはできないが、それでもスクリーンに映る一つ一つがカッコよくて痺れた。

立ち並ぶネオン、縦長のヴィンテージカー、ドライブインシアター、車に刺さったカギが揺れる音…。一つ一つのシーンがカッコよくて、垢抜けてて。登場人物もみんなカッコよくて、オシャレで、だけどバカで、情けなくて、どこか愛おしい。時折挟まれるテレビ西部劇がまた茶番感があって最高。

タランティーノが幼少期からいろんな映画を見て感じた「これめっちゃカッコいいじゃん!」という感動を、今度はタランティーノ自身が僕らに向けて発信しているように思える。

タランティーノから「ハリウッドへのラブレター」と言われる今作は、一方でその時代を知らない今を生きる映画ファンへのラブレターでもあるのかもしれないな、と思った。