ペジオ

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのペジオのレビュー・感想・評価

4.9
これでいいのだ

ここに来て改めてタランティーノは自身が敬愛するエルモア・レナードの正統な後継者になったのではないか?
緩やかでいて張り詰めた「レナードタッチ」を本作で完全にモノにしていると思った
劇的なプロットは無く、シーンやキャラクターのツイストで魅せていくところも今までで一番近い
リック・ダルトンとクリフ・ブースの関係性なんか『プロント』のハリーとレイランの雰囲気に似ていると感じた

この映画内世界の日常のスケッチの様なダラダラした描写が今までの作品にも増して良い(正直あと3時間長くても余裕で観ていられた。)
この映画を評する時に良く使われる「多幸感」に溢れている雰囲気は、実際タランティーノがこの時代の「ハリウッド」を清濁併せて愛おしく思っているからだろう
過渡期を迎えたハリウッドを象徴するような、未来に不安を抱くリック・ダルトンの人生が相対的成功、自己有能感など「それなりの幸せ」を手に入れているのが観ているこっちも嬉しくなってくる(年端もいかない少女に「生きてきた中で一番の演技よ」と賞賛されるシーンが堪らない。)
ハリウッドをどこか外側から俯瞰で見ているようなクリフ・ブースの佇まいはひたすらにカッコ良い(実際ハリウッドでなくドライブインシアターの裏に住んでるというのが何とも示唆的。)
多分まあまあのサイコパスなのは間違いないのだが(PTSDや根底にある諦念なんかも要因だろうが。おそらく嫁は殺してるだろうな…。)リックとのバランスで「良き相棒感」がマシマシに見える
「仕方ないか…」で済ます満足のハードルの低さ故か、基本常にヘラヘラしてるのも良い

そんな彼らが自分たちでも気づかないうちに、世界を「こうあるべきだった形」へと変えていたんだよ
それはそれは素敵なお伽話であった

死んだ方が良い奴は死んだ方が良い


そして「お姫様」はいつまでも幸せに暮らしましたとさ
めでたしめでたし
ペジオ

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