かたゆき

エンジェル、見えない恋人のかたゆきのレビュー・感想・評価

エンジェル、見えない恋人(2016年製作の映画)
1.5
生まれつき全身が透明な青年と目が見えない女の子とのピュア・ラブストーリー。
正直、それ以上でもそれ以下でもありません。
物語としてのリアリティなど度外視、雰囲気重視のアーティスティックな作品なのですが、それでも本作は物語の押さえるべき最低限のポイントをことごとく外してしまっているように感じました。
別に僕は必ずしも映画に整合性を求めているわけではありませんが、この主人公が生まれつき透明人間であるという理由がお父さんがマジシャンだったというだけとは余りに適当すぎやしませんか。
また、透明な赤ん坊が生まれてきたら助産婦さんらを巻き込んで大変なことになりそうですが、そこも適当にスルー。
どうやら彼はお母さんが収容された精神病院と思しき施設で、誰にも知られることなく大人になったみたいな感じでお話が進んでいくのも違和感しか感じませんでした。
恋人となる少女の家族が一切登場しないのも、それしちゃうと面倒くさくなるからという消極的な理由しか浮かんできません。
こういった特殊な世界観を成立させるためにはこれらのポイントに最低限何らかの説明がないと、観客はうまく物語に入り込めないものです。
特にこういうファンタジックなお話にはそういった部分によりきめ細やか配慮が必要で、そのためには長い時間をかけて脚本を練るべきなのですが本作にはそういった努力の後がほとんど感じられないんですよね、残念ながら。
これでは独り善がりで散漫な映画と言われても仕方ありません。

また、肝心のお話がいかにも拗らせ童貞男子が考えそうな妄想っぽいところも受け入れられませんでした。
この主人公、人間味がなさ過ぎて感情移入も何もあったものではありません。
透明な身体で生まれてきた健全な思春期男子なら、あんなことやこんなことや誰しもまずするべきことがいっぱいあるでしょうが!
ポール・ヴァーホーベンの『インビジブル』を観て勉強し直してこいって感じですね(笑)。
でもまあ透明人間と恋人とのベッドシーンは、なかなかエロティックで映像もキレイだったので星+0.5で。
かたゆき

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