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獄友のmiのレビュー・感想・評価

獄友(2018年製作の映画)
3.7
ユーロスペース の死刑映画週間より。
冤罪で無実の罪を着せられ獄中生活を送った人々の出所後を扱ったドキュメンタリー。
狭山事件、足利事件、布川事件、袴田事件の当事者たちの話。

まずもってこういうドキュメンタリーでありがちなのは、冤罪で失った時間に対する恨み辛みをベースにした展開が多い。
しかし彼らは冒頭「捕まってよかった」と言う。
これは想定外だし、彼らにしかわからない人生がそこにはある。
もちろんよかったなんて思ってもない当事者もいるわけだが。
横のつながりがあることにはびっくりした。
失ったものを羨むのではなく、得たものを慈しむその姿勢に心を打たれた。
生きている以上前を向くべきであるという彼らなりのメッセージと受け取った。

袴田さんの出所後すぐの会見で精神が崩壊している姿に唖然とした。
民放では間違いなくカットされる場面。
そこがいかに重要か今作は教えてくれる。

それぞれの人生を丁寧に取材しており、この監督がどうやって生計たててるか謎になるぐらい懐に入り込んでいる。
ラストカットのトランペットの音と袴田さんの目つきには鳥肌がたった。

ただ、エンディングの歌は宗教がかっていて結構気持ち悪かった。

冤罪をテーマにしたドキュメンタリーを観ていつも思うのは、被害者の遺族がどういう気持ちなのか。ということ。
真犯人はおろか、罪を犯してない人を犯人とし、その怒りややるせなさはどこに向かうのか。
こういうテーマの映画を是非観てみたい。

2019劇場鑑賞27本目
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