このレビューはネタバレを含みます
真実はわからないけど、
政界を担った人物とその周辺を、
こんな風に痛烈に描けるその手腕が凄い!
アダム・マッケイ!
前作の「マネー・ショート」は正直置いていかれてる感があったけど、
今回はなんだか見聞きする機会が多い言葉もちらほらで、見やすい..
って、どこかで似たようなことが、
いま私の住む国でもあったような??
→ヒヤリ..
この点においては、日本で通じるよう、
翻訳が丁寧に作られていると感じました。
プライベートなシーンの描きかた、
混ぜ込み方が秀逸ですね。
少なくとも映画においては秀才だったパートナー、
リン・チェイニーがいたからこそのデイック・チェイニーという流れが描かれるので、自然に納得してしまうけれど、
彼が本当に娘のことを想い再度政治の世界に戻ったのか、はたまた彼のモチベーションがなんであったのか、真実はわからないわけです。
そのあたりをクサいメロドラマ風にしてエンドロールを出してみせる演出は最高。
ちゃんと観客に、ディック・チェイニーにうっかり心を寄せそうになるシーンをつくり、「わかんないけどね〜」ってやってみせる。そうすることで、本来なら同じように想像でしかないはずの政治的、現場的なシーンがあたかもドキュメンタリーのような臨場感を持っているように感じました。
自由で、かつ意図的、創意的な演出が凄い!!
ところで、クリスチャン・ベイルはもうどこにいっちゃうんですか?笑
もはやどんな役でもこなしてしまうので(見た目も含めて)オスカーにノミネートされることすら、なんというか..規格外な感じが。
本作では、対するサム・ロックウェル、スティーヴ・カレルもとにかくうまいんですが、やはりキー中のキーであるリン・チェイニーを演じたエイミー・アダムスのうまさですよね。完璧。
美人で、うっかり話を聞きたくなっちゃうけど、ディック・チェイニー自身はもともと思想なんてなかったわけで、最終的には彼女の手のうちですから。
やー、不謹慎だけど面白い映画です。
そして私たちの社会とも結びつけて、
できることを考えていく必要はありそうです。少なくとも、政治の世界は正論がまかり通るところではないことはわかりますから、対してなにができるか、あるいはすべきなのかという一考に繋げるための作品として、見てよかったと思います。
と、わからないなりに小難しいことを言おうとしましたが、そんなに固くならずに観ても楽しめる作品になっているところが、この映画の凄いところでもあります。
日本ではこのような作品が出来ないのは何故?という意見をtwitterなどで見かけましたが、日本映画の製作背景やスポンサー云々などを置いておくとするなら、
その本領をいまいち発揮しきれずにいるように見える三木聡監督あたりに日本のアダム・マッケイになって欲しいな、なんて思ってしまいました。