TaiRa

生きてるだけで、愛。のTaiRaのレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
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16mmのザラついた夜に、赤と青のネオンの光が窓から侵入し、壊れちまった女と透明な男が寄り添って、そこに愛がある。

鬱病で家に引きこもってる女がいて、それの面倒見てる男がいる。女は母親から受け継いだガラスの精神に振り回されながら生きている。女はよく寝る。過眠症。抗うつ剤の副作用であると同時に世界への恐怖と嫌悪が睡魔を呼ぶ。「睡眠は死の従兄弟」と言ったのはNasだが、つまりはそういうことだ。女は自分で自分を冥界へ追い込んでいる。男は作家を目指していたがゴシップ記者になった。人に言われたことを書く仕事。男は無色透明になっていく。女の側に居てやるだけの優しい男は女に口答えもしない。女は男の元カノに捕まって社会復帰させられる。目がバキバキの元カノ。鬱だとかよく知らん人間はみな「甘えてる」とか「舐めてる」とか言って糾弾して来る。やりたくても出来ないから鬱なんだけど。朝起きれない人間だから気持ち分かる。生まれてこの方、起床は常に苦痛。目覚まし時計の音は精神を殺す。途方も無い善意が万能では無いと世の善人は知ろうともしないからカタストロフは避けられない。女がどうしようもない時、走って追いかけるのが男で、彼らは束の間の愛を糧に生きていける。夜の街、血流しながら走った女に惚れて、夜の街、服脱ぎながら走る女を追いかける。「あんたは私と別れられる。私は私と別れられない」と泣く、生まれた時の姿の女が美しかったからそれでいいじゃない。
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