櫻本榮真

冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた Fine(フィーネ)の櫻本榮真のレビュー・感想・評価

4.5
【はじめに】
作品に対して小説や漫画などの原作がある場合私はアニメーションを初見にして、後から原作に触れるようにしています。そのため原作との差異や矛盾点については原作から入った方のレビューにお任せします。あくまでアニメを初めて見た目線で書かせて頂いていることをご了承ください。

【良かったポイント】
シリーズの完結編として3作目の本作品は、シナリオのテンポが良く、中弛みも感じず最後まで一気に駆け抜ける感じでした。アニメ作品として完成度の高さは評価してしかるべきものだと思いますが、そこには脚本やキャラデザ、声優さん方のお芝居もありますが、私は「音」が大きく貢献しているように感じます。注意深く耳を傾けてみると、偏見が強い言い方かもしれませんが、アニメとしては音楽や効果音、環境音に強いこだわりを感じました。もちろん冒頭の要素は必要不可欠ですが、こうした目立たない部分への力の入れようが作品のクオリティを底上げするのだと思います。

【難しかったポイント】
映画作品として見たときに、大きく難しいポイントとして上げられるのは本作に繋がるアニメ作品を観ている事が大前提になる内容だというところでしょうか。タイトルにFineとあるとおり「完結編」を銘打っているのですからそれまでのストーリーを見ていることを前提にしたものだということは観る前からわかることです。しかし、例えば映画を鑑賞したことでそれまでのアニメ作品や原作に入っていく方がいたとすると、全体像が掴み切れないまま終わってしまうかもしれません。しかし、初見さんを思い切り良く割り切ったことで作品としてのクオリティを上げることに成功したとも言えるかもしれません。


【タイトルについて】
冴えカノのシリーズは、無印→♭(フラット)そして完結編のFineと続きますが、これは音楽用語で統一されてきました。Fineは楽曲の終止を意味するものですが、もとといえばイタリア語の終わりを意味するものです。一方でFineを英語として解釈してみると「大丈夫」という意味になります。当シリーズの終わりとして「大丈夫だよ」というメッセージが込められている…というのは深読みしすぎかもしれませんが、観終わった後でそう思えてしまいました。

【涙腺崩壊ポイント】
ネタバレになってしまうので、詳細は避けますがアニメを観てきた前提で考察すると、泣けるシーンは多々あると言えます。思い入れが強ければ強いほど…

【まとめに】
最後に正直なことを書かせていただけるならば、冴えカノFineは私史上もっとも鑑賞回数を重ねた作品です。TVアニメ版は観ていましたが、そこまでの思い入れはありませんでした。ところが、本作品を観たことによりシリーズの流れがとても腑に落ちたというか、一気に引き込まれました。すでにストーリーの流れどころか下手をすると台詞の多くまで記憶してしまっていますが、クリエーターのはしくれとして生きてきた私にはその側面も合わせて繰り返し観たくなる作品です。

今回は冷静なコメントを綴れたのか自信がありません。冷静になるのが難しいほど、私の心を揺さぶってくれました。否定や非難は避け、冷静にコメントをすることを目標に始めたFilmarksですが、早々に躓きました。
櫻本榮真

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