シカク

父、帰るのシカクのレビュー・感想・評価

父、帰る(2003年製作の映画)
4.3
ある日突如、12年間消息を絶っていた父と思しき男性が、微妙な年頃の兄弟の前に現れる。 
この父親が本当に血が繋がってるのか、他人なんじゃないかというくらい、一応躾の範疇ではあるがあまりに粗野でぶっきらぼう。
先に続く、父子の果てしなく歯痒く澱んだ空気の旅路が居た堪れなくなるし、実際にもこれと遜色のない成り行きの親子の事象ってあるだろうから、妙に現実味帯びてリアルに感じられた。
あと、兄弟の急に現れた父に対する反応や受け止め方がしっかりと描かれていた。
12年間に及ぶ父親不在は兄弟はもとより父にとっても心に空洞を穿ち、過剰で理不尽なまでの厳しさは、彼なりの兄弟の父親像を体現していたのかもしれない。

序盤の兄弟の追いかけっこというより競争、12年振りの再会での酒を飲ませたりの
絵的に切り取られた食事、必ず暗い中でも日記を付け合う兄弟、小屋の窓枠越しから額に縁取られた絵画みたいに兄弟がこちらに向かって歩いてきたり、真上からのショット、画角を傾けたり、寓話性と絵画の様な均整の採れた映像イメージが宗教的雰囲気をそこはかとなく感じられた。 
調べたら実際そうみたいで、父がベッドに横たわるシーンや最後の船のシーンだったり、キリスト教のモチーフが組み込まれており、印象的で機知のあるギミックが撒かれている。 

主に父と兄弟の三人がメインで、その全員のそれぞれの態度が明確でぶれず、最後は3本の強い流れがぶつかり混濁し、調和するのか、流れがどの様に変化するのかと釘付けになり、最後の写真が決して穏やかならぬ日々の中で、足跡を緩やかな波が打ち消すように、余韻として心に刻まれた。
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