父、帰るの作品情報・感想・評価

「父、帰る」に投稿された感想・評価

海

海の感想・評価

4.9
墜落した鳥。草木の揺れる音。空は真っ青に澄み切って、もっと青い海は果てしなく遠くへ続いている。
果て無いほど遠く見えていた海も、明日も、死さえも、辿り着こうとすればすぐだったのだ。
目をそらす、それだけで、すぐそこにある事実に気づかないでいられる。
なんて悲しいんだろうな。

葛藤、衝突。濁りのない激しい感情は、いつも突然に行き場所を失っては、瞳の中に全部映り込んだ。青く燃えるような怒り。時に滲んで涙を零す。

弱虫だったこと、怖かったこと、意気地なしで情けなくて、言われたことだって何一つできなくて、口先ばかりで何もできなかったのはいつも僕の方だった。泣いても怒っても一方的な気持ちなんか、あまりにかっこ悪い。でもそうじゃなかった。そうじゃなかった。
まだ溢れて止まらない感情は、これからどうしたらいいのだろう。
おまえのせいだと甘ったれることは、もう二度とできない。

どうして今更帰ってきたの?
どうして今更になるまで、待っていたのだろう。父だけじゃなく、僕は。


これも想像していた50倍くらい好きだった。風の吹き抜けるように、心の隅にまで触れに来た。
すごく観てると悲しいしやりきれないし苦しいんだけど、きっと何度でもまた観たいなと思うだろうし、つまりは好みだったんだ。映像も、内容も
最近ロシアの映画がちょっと好きになってきたから、ほかにも観てみたいなあ。
ぱたぱたと落ちる雨の音や、風の音や時間の連れてくる匂い、日記を書くペンの滑る音のすぐそばで眠る姿、すごく美しかった。
この映画スゴイ。

2018.4.20
砂

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3.9
近年注目を集めるアンドレイ・ズビャギンツェフ監督作。
不通だった父親の12年ぶりの帰郷に戸惑う兄弟を描いた映画。

冒頭のエピソードで明示されるように、兄アンドレイと弟イワンの性格は対極である。
強権で厳しく、寡黙な父に対し、アンドレイはうまく接しようと調子を合わせられるが、まだ少し幼いイワンは懐疑・反抗的で意固地。
久々の家族団欒の食卓も緊張感で満ちている。家庭に入り込んだ異質な存在のようだ。

小旅行の中でも兄弟と父の間に意思疎通の描写はなく、ほとんど主従の関係。予定の変更も、説明はしない。言葉ではなく、すべてを行動で示す。父性の塊のような存在である。反抗的なイワンに対しては罰を与えるが、こういった出来事もあり不満を募らせていく。

3人だけの旅は車から船を介して無人島へと向かう。
そして、不和を元凶とした予期せぬ展開を迎える。
冒頭にも表れる塔が、この島でも大きな意味を持つ。

イワンにとって父はほとんど不在の者であり、父親として確かな存在ではない。
パパ、と呼ぶのも命じられたからであり、その呼び名は他人のそれとして次第に変化していく。しかし、最後の最後には大きな声でパパ、と叫ぶのである。
兄弟はそれぞれ、父との数日間の旅の中で行動によって示された、遺されたものを学んでいく。

作中での説明がなく、行動についても示唆的な描写でとどめることが多いのだが、電話の相手や父が島で掘り起こした箱の中身はなんだったのだろう。それこそがまさに映画そのものの象徴なのだろうか。

精緻なカメラワークで、写真的・絵画的なカットが印象的。
特に自然風景や、陰影のついたカットは非常に美しい。
本人も認めている通り、タルコフスキーの映像を観た時の印象が近い。
他の作品も観ようと思う。
hk

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3.6
すごく好き。

知らない方がよかったことってある。
知らなければ、自分が特別だと思える、普通だと思えるようなこと。知ったら今までの普通が壊れるようなこと。
でも、それはいつか必ず、あのとき知れてよかったことになるはずだ。
そうなるはずだったのに。
カツマ

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3.8
あんなにたくさん撮っていたのに、12年ぶりに帰ってきた父親の写真は一枚も無かった。雨音が鳴り響くエンドロールは、うらぶれた波打ち際のように寂しい音色を地面へと落とし続ける。愛し方が分からなかった父親と、突如反抗期に放り込まれた息子。複雑な心情は絡み合い、合成写真のような青すぎる空との対比は儚く美しかった。
アンドレイ・ズビャギンツェフの名を世界に知らしめた衝撃の長編デビュー作。最初期からこの監督は景色を透明に近づけるような、美しい描写力を持っていた。そしてその景色の美しさと反比例して、現実の重みは容赦なく、こんなにも世は不条理に満ちていた。

兄弟のもとに12年間音信不通だった父親が突然帰ってきた。兄のアンドレイは父親をパパと呼び好意的に接していたが、弟のイワンは本当に父親なのかどうかも訝るほどに警戒心を隠さなかった。それもそのはず、兄弟は父親の顔を知らず、何故彼が出ていったのかも聞いていなかった。
そんな父との3人での旅行は不安だらけだったが、兄弟は釣りをすることを楽しみに、目的地の滝へと車は進んでいった。
父親は道中電話ボックスで何事か話していたり、兄弟に冷たく当たったりと、その行動は何やら不可思議で、次第に弟のイワンは父親へと真っ向から反抗し始めるのであった。

この映画はロシア映画である。かのタルコフスキー作品やあの『不思議惑星キンザザ』がそうであったように、自国への警告めいたメッセージを内包している可能性もある。しかし、それ以上に感じさせるのは宗教的な寓意性である。父親をキリスト(神)、兄弟を信者と例えると色々な事象の辻褄がピタリと合う部分もある。

これらはあくまで推測の域を出ない。個人的には子ども達に不器用に接し続けた父親の物語として見ていたい。高いところから飛べなかった少年の、少しの成長を見ていたかった。
sonozy

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3.5
『ラブレス』のアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の過去作品という事で観賞。
2003年ロシア映画。
ヴェネチア国際映画祭・金獅子賞(最高賞)と新人監督賞を受賞。

12年間も消息不明だった父親が、ある日突然、帰ってくる。
無表情で迎える母と祖母。そして呆気にとられるふたりの息子、アンドレイとイワン。
強面の父と家族はワインで静かに乾杯する。

翌日から父はふたりの息子を連れ、車で旅に出る。
映画はこの7日間の、親子3人のロード・ムービー風に進む。

父は12年間一体何をしていたのか
この旅の目的は何なのか
本当にこの人は父なのか・・・

旅が進むにつれ、父の厳しさは高圧的になり、兄のアンドレイは受け入れているが、弟のイワンはことごとく反発。
やがて、最終目的地らしい無人島にたどり着くが・・・悲劇が起こる。。

ミステリアスな父の言動の意味は最後まで明らかにならず、ゾワゾワ感が解消されないまま終了。

単純に見れば、父性の伝授による兄弟(特にキャラが立っていたイワン君)の成長物語みたいに見えなくもないんですが・・・

神話的だったり、いろいろな解釈やメタファーがありそうですが、調べるのは面倒なので(笑;)、というか、こういう作品はこのゾワゾワ/モゾモゾ感そのものを楽しむ方が良さそうです。
LAGUNA

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4.5
昨日みた「ラブレス」の監督作品。
昔みて強烈な余韻を残し印象に残っていたのでもう一度みてみた。

2003年 ヴェネチア映画 金獅子賞受賞作品。これが初監督作品だから驚き。

「ラブレス」と続けてみたので、画が似ていたのにびっくりした。

ある日、家を出ていた父親が12年ぶりに帰ってきた。父は兄弟を小旅行に連れて行く。
父親は無口で態度も冷たくみえる。
父は、今までどこに?なぜ12年たって戻ってきたのか?本当に父親なのか?セリフもなく淡々と進んでいく。兄の方は、パパと呼ぶが弟はどうしてもパパと呼べない。

ラブレスは、直接手を下してないが子を殺した(?かわからないが)こっちは、逆。
ただ、こちらには「愛」を感じた。
沈み行く父に 弟は泣きながら「パーパ」と叫んだ。

父親が、どこにいたかとか、なぜ帰ってきたかとか、この映画ではそんなことは関係ない。(ただ、あの箱は何なのか気になるが)

1回みたときは、海の青さや空の青さは印象に残らなかった。あまり色がないように思えたけど、今回は、空の青さが印象に残った。最後にはどんよりしていた。

冒頭で、母親が高い塔にはしごを上ってイワンのもとに来るシーンと やはりクライマックスで島で父親がイワンを追いかけて塔に上ってきたシーンが重なる。

説明が難しいが、凄い映画だと思う。
静でセリフもないのに、強烈に心に残る。

映画に説明や理由を求める人にはお勧めできない。
12年ぶりに突然帰ってきた父親。

何故帰ってきたのか。
何故何も語らないのか。
そもそも本当に父親なのか。

謎も多く残されたままエンディングを迎えるが、
イワンの「パパ!」という最後の叫びが、全てを物語ってるように思う。
kenpon

kenponの感想・評価

4.5
兄弟そして父との距離が微妙だけど3人は激しく懸命に対峙するのが観て取れる
最後失った事の大きさを以って兄弟と父との間に理解が生まれたのだと思う
美しい自然に囲まれながらも、それが更に一種の緊張感を増す
見終わってからの一服に残るのは大きな疲労と安堵だ
yadakor

yadakorの感想・評価

2.0
本当のこどもと大人が回想して描くこどもってかなり違うよな
それが強くて嫌になる作品
景色も特別きれいとは言えない
30分くらいなら良かったけど、退屈すぎ
見終わった後に残る作品に感じました。
母親と暮らしてる二人の兄弟のもとに12年ぶりに父が帰ってきたのが話の始まりです。
母親の勧めもあり、父子三人が釣りに出かけて孤島で三日間キャンプを張るのですが…。
父は12年の空白を埋めようと、子供たちを見ようとします。しかし、元々が人付き合いが下手なタイプなので空回りして叱ったりします。そして子供が逆に父を遠ざけようとします。
私も人の親です。子供たちに分別を教えるのは親の役割です。父が兄弟を叱る気持ちは痛いほど分かります。
結末は言いませんが、親の痛みと子供の戸惑い、お互いの愛を映像で語る秀作と思います。
ちなみに映像の出来映えは、故タルコフスキー監督並の詩的さ感じましたよ☆
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