父、帰るの作品情報・感想・評価

「父、帰る」に投稿された感想・評価

たらお

たらおの感想・評価

3.8
よかったです。
箱の中身が気になって仕方ないです。

少年の不安定さとロシアの寂しさ苦悩さを象徴したような一作。

彼は誰なのか、何故帰ってきたのか、12年間どこで何をしていたのか、謎に包まれると人はどうしようもない不安を感じるし、警戒するし、攻撃的になるんですね。

バックミュージックがほぼなく、セリフも少なく、その分出演者たちの表情視線が光ってました。一触触発なシーンが多いのですが、その中でどうにか幸せな結末をと思わずにはいられなかったです。


兄役を演じたウラジミール・ガリーンは撮影後まもなく、不運にも湖で事故死しています。
がく

がくの感想・評価

4.5
素晴らしい。
青い色調が心理的に作用する。
この先何が起こるかわからない不穏さ。

ロシアの美しい森、空、海岸、道、空気を取り込むことに成功した映像詩。

静かに進むが、丁寧な行動描写により少年と父親の関係性に引き付けられ続ける。

息子、父親ともに多くを語らない。何か求めており、何か伝えようとしているけれど、素直なコミュニケーションを取りようがない12年間の空白が重い。

父親の不在を経験した子にとって、父親とは、どう関係を持てば良いかわからない、得体の知れない、絶対的な力を持つ存在なんだろうと私たちに感覚的に理解させる力を持つ類い稀な作品だと思う。

抒情詩人として初長編映画作から完成しているアンドレイ・ズビャギンチェフの世界にひれ伏すしかない。

父親役 コンスタンチン・ラヴロネンコ
母親役 ナタリヤ・ヴドヴァナ
shun

shunの感想・評価

4.3
答えはないが父親の演技と塔の上のセリフだけで泣くし、ラストもすばら。
こういうシャープでちょっと青くて、動くときは派手に動く撮影、画面好き。
アチェーツ…
ロシア語でお父さんという意味らしい。
なんかカッコいい…。


母親と祖母と暮らすアンドレイとイワンの兄弟のもとに、音信不通たった父親が12年ぶりに帰ってくる。
さっそく、その翌日から父親が2人の兄弟を連れて旅に出かけるも、行き先も告げないし、12年間の過去のことも何も喋らない。

全く言葉の足りない上に高圧的な父親との、世にも楽しく無さそうなロードムービーを延々と観せられるなんとも不思議で、でも目が離せない映画だった。


この旅路、父親からはなんの説明もない、しかし息子達は無条件に従わなければならない、口答えすれば引っ叩かれる。
この、いかにもロシアという国家の何か色々なものが象徴されてそうな父親の下での生き辛さを終始描くような作品かと思ったら、それよりももっと個人的な、幼い頃父親に捨てられて母子で苦労したというズビャギンツェフ監督自身の“空白の父親”に対する恨みと渇愛のアンビバレントな思いが爆発した作品だった。
ほとんど映像で書いた叙情詩のような感じかもしれない。


『ラブレス』で少年が失踪する前に最後に触った階段の手すりを“名残惜しそう”に映し取る印象的なカメラワークがあった。
そしてこの映画は父子のロードムービーの中で、その“名残惜しそう”なカメラワークが沢山溢れていた。


最後に映される父親の宝物は、実の父親の心の中にも“それ”があるはずだという監督のかすかな願望だと思うと切ないねえ。
shoepexe

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3.4
いつからだろう、この手の親子ものでどちらかというと父側のほうの目線に寄せるようになったのは
福之助

福之助の感想・評価

3.8
謎多き父

12年振りに帰って来た父と兄弟が旅に出る話しです
父が強引で横暴なんです
これは子供に嫌われちゃう
「男親」にしか出来ない事を果たそうとしていたんだと思いますが、弟の気持ちわかるな

衝撃的なラストですが父は秘密を持ったまま…(箱の中身がとても気になる)
父の想いは伝わっている
本人達が気がつかない間に

兄は「男の子」から「男」へ成長してましたし
お兄さん役のウラジーミル・ガーリンさんは撮影後にこの湖を訪れた際に事故死しているそうで…

そんな事実も重なりやり切れない映画です
Palpatine

Palpatineの感想・評価

4.7
自分の過ちから起きた取り返しのつかない事故ほど人の心に残るものはないと思った
父の人物像は魅力があったし、兄弟の微妙な力関係も面白かった

子供っぽくも大人っぽくも見えるイワンの子役がすばらしい
Zuidou

Zuidouの感想・評価

5.0
オフショット集かと思った最後のアレが本当は何なのか分かった瞬間にこの作品が映画という枠組みを乗り越えてきた感覚があった。二人兄弟、そして流石に12年も間が空いたことは無いけど父親があまり家にいない家庭っていうところが自分と被っていたせいで完全なる他人事として観ることが出来なかった。家族のようであり他人のようでもある「父親」といういまいち得体の知れない生き物と恐る恐る触れ合うときのあの変な空気。気まずいけど確実に嬉しさはあって、でもやっぱり少し怖い。感情の伝え方が絶望的に下手糞で昔気質なところまで自分にとっての父というものとリンクしていて、だからこそ最後の最後にやってきたスライドショーでフィクションとノンフィクションの境目が無くなってしまった気がしたんだと思う。『父、帰る』っていうか『父、と、発つ』だなあとか途中まで思ってたけど紛れもなく『父、帰る』だった。ダブルミーニングになっているように思えるのは狙ってるのか違うのか。「どうして帰ってきたんだ」の答えはきっと「伝えるためだ」なんじゃないか。ある種の原始的なイニシエーションを描いた映画なのかも知れない。
ほたて

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3.9
マンテーニャの描いた
「死せるキリスト」を授業でみつけた時
この映画の冒頭を思い出した
Rena

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3.5
弟 イワンの鋭く賢そうなまなざし
兄 アンドレイの人懐っこくも、またどこか窺うようにも見えるまなざし
そして、口数が少なく力ずくに走る厳格な父

写真の記憶しかない父親が、12年ぶりに突然帰ってきた。

戸惑い 親近感 好奇心 疑問

入り乱れる様々な感情を抱えたまま
打ち解ける間もなく、父の提案によって3人で遠出をすることに...

そんな父に対して兄は比較的従順に接するのですが、弟はこの新しい状況をなかなか受け入れることができず、つい反抗的な態度をとってしまいます。

父と関係を築きつつある兄 と 心を許すことができない弟

対照的な兄弟でどこか弟の方が主導権を握っているように感じましたが、終盤に様相が一変します。
この逆転が本当に見事でした。

観終わった直後は、ところどころで怪しい雰囲気を出し、まただいぶ厳しい態度をとっていた父親の行動が理解出来ず もやもやしていましたが、これが不器用な彼なりの "やり方・示し方" だったのかなぁ...と少しずつ考えられるように。
ただ しばらくするとそんなことよりも、この3人の演技の凄さがじわじわきだして、私の中で作品に対する評価が変わっていきました。

まさに迫真
リアリティーがありすぎて、演技が演技に見えなかったです。
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