KUBO

曙光のKUBOのレビュー・感想・評価

曙光(2017年製作の映画)
3.5
【2018 アーカイブ】

日本では、1日に約80人、年間2万人以上の人々が自殺で亡くなっている。

自らの娘をいじめによる自殺で亡くした夫婦が「ハートビート」という、自殺志願者を思いとどまらせて救う活動を始める。

自殺の多い場所の近くの電話ボックスに10円玉と「重大な決断をする前に相談してください」というメッセージと電話番号を書いたカードを置き、相談の電話がかかってくれば何時であろうと現場に駆けつける。

すごいのはここからだ。なんとか自殺を思いとどまらせた人を自宅に連れ帰り、立ち直るまで家族といっしょに住まわせ、寝食を共にするのだ。

実はこの映画、藤䉤庸一さんという実在の牧師さんの活動がモデルだ。上映後のトークショーで、そのリアルなお話しを聞くことができたが、自分のプライバシーを全て投げ打って、自殺救助活動に命をかける姿に胸を打たれた。

また、この映画の監督、坂口香津美さんは実際に首吊り自殺を発見して死体を綱から下ろした経験を持つ。実はその自殺者は、当時監督の付き合っていた女性の元カレで、発見場所もその女性の部屋だというのだ。

こういった経緯と、坂口監督と藤䉤さんとの出会いがあって、本作が生まれた。

それぞれの自殺帰還者がかかえる心の問題。共同生活を続ける上で起きる、帰還者同士の、家族の、様々な問題。そして終盤にはフィクションとしての映画ならではの展開も。

9月公開を目指す本作の、本日は初の試写会であったが、予算もない中で製作されたインディーズ作品ではあるが、重く、深いテーマを持った考えさせられる作品だけに、多くの方に見てもらえれば、と思う。
KUBO

KUBO