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オールド・フォックス 11歳の選択のKUBOのレビュー・感想・評価

3.6
今日の試写会は、映画『オールド・フォックス 11歳の選択』舞台挨拶付き特別試写会。

上映前の舞台挨拶で門脇麦が「哲学的」って言ってたから「どんな映画なんだろう?」と思って見てみたが、見終わって「なるほど」と。なかなかに奥の深い映画だった。

11歳の少年リャオジェのお父さんはレストランで働きながら、いつか自分の店を持とうと倹約しながらつましく働いている。

思いやりがあり誰からも好かれているお父さんだったが、レストランの余り物を持って帰って食べるなど、ギリギリの生活をしている彼らは「負け組」なのか?

学校の友だちからいじめられているリャオジェをお父さんの務めているレストランのオーナーで地域のボスであるシャが助ける。

「他人なんて関係ない」
「相手の気持ちを考えるなんて負け組することだ」
「私が恐れられるのはなぜだと思う?それは『不平等』だからだ」

そんな無慈悲なことを言うシャは”OLD FOX” と呼ばれているが、シャはリャオジェに目をかけ、ある意味の帝王学を授けていく。

果たして11歳のリャオジェの選択とは?

舞台は1989年の台湾。日本でもバブルの頃から「負け組」「勝ち組」なんて言葉が流行ったが、果たして経済的な成功が全てを分けるのか?

本作がおもしろいのは、よくある邦画なら「貧しくとも愛があれば」とか綺麗事にしてしまいそうだが、負け組の象徴である優しいリャオジェのお父さんだけを正義とは描かずに、支配者でもある”OLD FOX” の性格付けに奥行きを持たせ、その2人の一見真逆にも見える生き方から少年リャオジェが何を得、何を選択するのかということに全く説教臭さがないってこと。

このリャオジェ役のバイ・ルンインくん、台湾きっての名子役ということだが、この子の演技が素晴らしい。

お父さんのリャオタイライを演じているのは、あの『1秒先の彼女』のリウ・グァンティン。

リャオタイライの幼なじみで、彼に想いを寄せる人妻役で、日本から門脇麦が出演しているのも話題。

映画全編を通して、晴れ間はなく、雨と濡れたアスファルトが印象的な映像。

現在の日本社会には閉塞感が漂っているが、台湾の未来に夢を託した希望のあるラストシーンが素晴らしい。

映画『オールド・フォックス 11歳の選択』は6月14日より全国公開です。
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