映画が無声で「活動写真」と呼ばれていた大正時代。少年期に幼馴染の梅子と芝居小屋に忍び込んでは上映の傍らで巧みな説明をつける活動弁士に憧れていた青年・染谷俊太郎が、偽弁士を務めさせられた興行師を偽る窃盗集団から抜け出して斜陽の芝居小屋「青木館」に住み込み、本物の弁士を目指す中での騒動を描く周防正行監督作品です。
『それでもボクはやってない』や『舞妓はレディ』らの周防作品ではチーフ助監督を務めていた片島章三が書き上げた脚本を気に入った周防監督が自ら映画化した作品で、日本の映画史の初期、まだ映画が無声であった時代ににおいて欠かすことのできない存在であった「活動弁士」を、周防監督の得意とする上品で前向きなタッチで描きます。
本題である「お仕事映画」の展開といかさま興行師の因縁に伴うスラップスティックな展開が並行する物語ですが、後者と周防映画との相性に疑問を感じ、前者が薄まってしまう印象は否めずではあります。それでも批評ではなにかと「説明的」が一刀両断されてしまいがちな現代にあって、日本伝統の「話芸」の奥深さを垣間見せる一作です。