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カツベン!のmのレビュー・感想・評価

カツベン!(2019年製作の映画)
2.0
冒頭の子供時代のエピソードがあまりに凡庸で、出鼻を完全に挫かれる。

冒頭に限らず、この映画とにかく脚本が悪い。そして正直演出も鈍い。
犯罪もの的サスペンスもアクションもと欲を出しすぎた上にそれらをまとめ切る事もできず、映画の印象は完全にとっちらかって散漫になっていた。表現としてのスラップスティック・コメディを目指しているんだけど、映画自体の印象も悪い意味でスラップスティック。
ライバル館のヤクザの邪魔とかは物語の障害としてあった方が良いけど、主人公の過去にまでそれを絡めてしまった為に映画は無駄に重くなり、更にごちゃごちゃともたついている。
せっかく成田凌が完璧に活動弁士のテクニックを習得したのだから、それに懸けてかつての周防映画のように『お仕事映画』として『駆け出し活動弁士の青春映画』に的を絞って描いた方が良かったと思う。活動弁士や映画への愛・敬意まで薄まってしまった。

この映画の最大の美点は成田凌で、主役として映画を背負える存在感や演技力をしっかり発揮している。先述の通り活弁も見事に様になっていて、意気込みもひしひしと感じられる。この人はやはり良い役者だと思う。
ヒロインの黒島結菜は意外と勝気、悪女の井上真央はギリギリでテンプレを脱してこういう役もイケるという振り幅を魅せていて、各々良かった。しかし女性像は古臭くなる寸前のかなり際どい所。
永瀬正敏は活弁が意外な程に巧くて驚いた。
竹野内豊と高良健吾はテクニカルな演技が必要になる役柄なのに2人とも自然体の時に活きる人達なものだから、完全なるミスキャストで観ていて辛い。

いつもの竹中直人だけでなく、かつての周防組の面々や周防監督の抜擢によって映画の世界に足を踏み入れた上白石萌音まで顔を見せる周防組大集合っぷりは目に愉しい。

ロケ地や美術のこだわりも感じられて、スタッフの気概は感じられただけに脚本がもう少し良ければな・・と残念になる。
でもクライマックスの小規模チェイスシーンでのささやかなキートンへのオマージュは笑った。
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