紅孔雀

来るの紅孔雀のレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
4.0
簡潔な題名と、出演者が全員上を見上げているポスターにまず惹かれる。
原題の『ぼぎわんが、来る』もなかなかのタイトルですが、ぼぎわんと言い切ってしまうより、何か分からないものが「来る」方がよほど怖いと思います。安部公房はかつて「SF、この名付け難きもの」と言って創世記の日本SFを鼓舞しましたが、ジャパネスク・ホラーもまた、名付け難き恐怖をテーマにすべきと思いました。
前半は、その“名付け難きもの”が跳梁跋扈する土俗ホラーでけっこうビビりますが、途中から『帝都物語』かい!と思わせる大スペクタルに変貌します。このあたりが中島監督らしくて賛否が分かれますが、私は面白く感じました。
その転調を破綻させなかったのは、やはり主役級俳優の頑張りでしょうか。妻夫木聡の軽薄、小松菜奈のヤサグレ、岡田准一の汚れっぷり、さらに松たか子の貫禄と柴田理恵の迫力。みんな何かが憑依したような熱演振りでしたが、私は何よりも、猫を被った黒木華の演技に舌を巻きました。時に夫や娘への悪意が噴出する瞬間があり、その豹変ぶりが一番怖かったです。
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